お知らせ
スタートアップ×三井不動産リアルティの共創で新たな事業創出を目指す。「OPEN INNOVATION PROGRAM 2024」開催
三井不動産 ベンチャー共創事業部と三井不動産リアルティ シェアリング事業本部は、8月29日(木)に、「OPEN INNOVATION PROGRAM 2024」を実施しました。
シェアリング事業本部と新たなビジネスを共創できるスタートアップとが出会うことを目的に実施した今回。三井不動産リアルティ シェアリング事業本部の星野純一氏と、三井不動産 ベンチャー共創事業部の太田に、イベント実施の背景や今後の展望を聞きました。
共創できるスタートアップと出会う。「OPEN INNOVATION PROGRAM 2024」実施の背景
「OPEN INNOVATION PROGRAM 2024」は、三井不動産リアルティのシェアリング事業本部とともに、新たな価値創造を目指すオープンイノベーションプログラムです。昨年も、三井デザインテックとスタートアップのマッチングを目的に実施しました。
前提として三井不動産リアルティは、不動産流通事業のリーディングカンパニーとして、不動産仲介や駐車場経営、会員制カーシェアリングサービスなど、さまざまなフィールドでサービスを提供しています。なかでもシェアリング事業本部は、駐車場事業(三井のリパーク)やカーシェアリング事業(三井のカーシェアーズ)などをメインに担う部署。駐車場を単に車を停めるだけの場所と捉えるのではなく、スマートパーキングの整備やマイクロモビリティステーションの導入など、さらなる価値向上に向けて新規事業にも積極的にチャレンジしています。
そんなシェアリング事業本部が、今回のイベントを実施した背景について星野氏は次のように話します。
星野氏「これからの未来で考えたときに、例えば『駐車場×〇〇』のように当社のアセットとスタートアップの方々の技術やサービスを掛け合わせることで新規事業を生み出したいと考え、今回のイベント実施に至りました。あくまでも、我々とスタートアップ企業様がタッグを組み新しい事業を創出することによって、社会やお客様に対してよりよい暮らしを実現できるサービスを展開していきたいという想いがあります。また自社内においては、これからいろいろな方々と共創していく姿勢を広く見せていきたいとも考えています。当社の強みやアセットをしっかりと認識し、こういったイベントを通じて様々な企業様と協業・共創を実現することで、自社の社員一人ひとりが新しい技術やサービスを持つ企業様に目を向け、ボトムアップでアイデアが生まれる状態にしたいと考えたのです」
5社のスタートアップが集結。白熱のピッチを終え、多くの質問が飛び交う
ここからは、イベント当日の様子を紹介していきます。
最初のオープニングでは、シェアリング事業本部の星野氏より挨拶と事業を説明。共創を行いたい分野として「新たな土地活用メニュー」や「ARやVRなどの完全新領域」、「会員ビジネス」や「新しい駐車場のあり方を生み出すサービス」などを挙げました。
続いて、5社のスタートアップによるピッチとQ&Aを実施。今回、ピッチを行った5社を順番に紹介していきます。
Sinumy株式会社
1社目は「シームレスな体験で世界を幸せにする」をミッションに掲げ、スリープ状態のスマートフォンでハンズフリー・非接触の個人認証ができる独自技術を展開する、Sinumy株式会社。同社では、三井不動産リアルティとの共創のアイデアとして、これまでゲートに駐車券を入れたりスマホをかざしたりして決済していた有料駐車場での体験を、完全にハンズフリー化するビジネスなどを提案しました。
●倉内氏のコメント
「当社の技術は非常に分かりにくい部分もあるなか、どうやって技術を活用していくのか、具体的に知っていただく場になりました。世の中の認知度をもっと上げるためにも、ぜひ実証実験から、三井不動産リアルティさんと協力させていただきたいです」
レイ・フロンティア株式会社
2社目は位置情報などの行動データを収集・推定する技術を通じて、サービスの企画提案やシステムの開発・運用などを行うレイ・フロンティア株式会社。同社が持つデータや技術を活用することで駐車場周辺にはどのような人が住んでいるのか、駐車場に置くべき車の種類は何かなど、ユーザーについて解像度高く分析する方法を提案しました。
●田村氏のコメント
「エリアにおける移動傾向の可視化・分析は、まだまだ進んでいない部分もあるなか、私たちが提供する技術やサービスを活用することで、三井不動産リアルティさんのアセットを活かしながら新しいビジネスが生まれる機会になればと思います」
株式会社シナスタジア
3社目は東京大学発のベンチャー企業で、自動運転車内でのエンタメサービスの開発を手がけるほか、3Dコンピューティングやデジタルツインの技術に強みを持った株式会社シナスタジアです。カーシェア車両を用いた3Dデータ収集に関する提案のほか、様々な土地活用イメージを3Dで即時可視化する土地活用シミュレーターに関する提案などを行いました。
●岡井谷氏のコメント
「国土交通省など、政府自治体系の方々からの当社技術に対する認知は徐々に広がってきているものの、技術的親和性のある不動産・建築土木・インフラといった各業界、特に民間事業者の方々には、殆ど認知されていない状況です。そのため、こうした交流の機会をいただけたのは非常にありがたく、三井不動産リアルティさんとの協業実現に向けた議論を今後活発にしてまいります」
matsuri technologies株式会社
4社目はソフトウェアを主軸に、空間の価値を最大化するソリューション「StayX」で民泊などの施設を無人運営するmatsuri technologies株式会社。同社では、三井不動産リアルティのアセットを民泊運用するといった不動産の活用から、民泊向けのファンドを組成するなど未公開不動産の活用までを提案しました。
●小林氏のコメント
「まずは私たちのようなスタートアップと一緒に実証実験を行いながらスモールスタートで始めることで、三井不動産リアルティさんとしてもリスクを抑えながら新規事業に取り組めると考えています。とくに今回、三井不動産リアルティのメンバーの皆さまが、積極的にご質問をくださって、関わる姿勢にとても熱量を感じました」
株式会社コークッキング
最後の5社目はつくり手と食べ手の関係性のアップデートをミッションに掲げ、食品ロスの危機にある食品をレスキューできるモバイルオーダーサービス「TABETE」を展開する、株式会社コークッキングです。同社では営業時間終了後に余った食品をロッカーで受け取れる実証実験を行っており、三井不動産リアルティの遊休スペースを活用してロッカーを配置するビジネスを提案しました。
●川越氏のコメント
「三井不動産リアルティさんとすぐにできそうなこともあるため、まずは実証実験的に進めてみながら、少しずつ形にしていきたいと思いました。食品をレスキューできる環境を整えるうえで、三井不動産リアルティさんが全国に持つアセットは非常に活用の幅があると思いますので、一緒にやっていきたいです」
5社のピッチいずれに対しても、三井不動産リアルティのメンバーからは数多くの質問が投げかけられており、新規事業の可能性に対する期待感が現れていました。
そして5社のピッチ終了後、シェアリング事業本部 副本部長の藤井氏による総評で締めくくられ、その後は懇親会を通じて三井不動産リアルティのメンバーとスタートアップ企業の方々が直接話す機会となりました。
スタートアップ×三井不動産のマッチング機会をさらに増やしつつ、事業化に向けたサポートを行っていく
イベントのサポートに携わったベンチャー共創事業部の太田は、今回のようなスタートアップ×三井不動産グループのマッチング機会を作ることで、次のような効果を期待すると話します。
太田「このイベントが目指すのは、新規事業の創出はもちろんですが、社内目線で見ると、三井不動産リアルティで新規事業に関わっている担当者の方から決裁者や役員クラスの方までが、一斉に事業共創のプレゼンを受けることで『こんな技術やサービスがあるんだ』ということを知る機会となり、目線を高く新しいところに揃えられるということにあるのだと感じています。それによって、社や事業部、チームのなかで新しい共通言語が生まれる可能性がある。その結果、組織的に新規事業を考えるときのスピードアップにつながればと思っています。今回ベンチャー共創事業部は、スタートアップと三井不動産グループ、回転スピードの異なる2つのギアがうまく噛み合うための調整役としてサポートを行いました。そのなかで、スタートアップとの共創のイメージが湧き、まずは実証実験のようなスモールスタートで新規事業の種が生まれ、事業化に向けた具体的な行動の一歩につながったりすることを期待しています」
昨年は、スタートアップと三井デザインテックのマッチングを目的に同様のイベントを実施しましたが、その後の成果も出てきています。
太田「例えば、三井デザインテックでこのプログラムを実施したのは、働き方改革のコンサルティングチームです。そのため、クライアント様向けにスタートアップ企業の方々と一緒になって、テクノロジーを生かした提案を行う事例が複数生まれています。そういった提案からサービスの導入につながるケースも出てきています」
このように一定の成果も出てきているなか、最後に今後の展望について次のように話しました。
太田「1回目より2回目に開催したときのほうが共創実現の確度が上がってきており、社内でもこうした取り組みが大事だという浸透が進んできました。この勢いのまま、各グループ会社に今回のようなイベントを横展開しながら、さらに社内での認知獲得につなげていきたいです。今回実施した三井不動産リアルティにとっても、もう一回やってみたい、違ったトライをしてみたいという機運が広がることを期待しています。とはいえ、まだまだ我々も手探りの部分があるため、こうしたマッチングの機会を創出しつつ、事業化に向けてどんなサポートができるのかを引き続き考えて動いていきたいです。イベントをやることは目的ではなく、あくまでも事業創出のきっかけを作るための手段ですので」
スタートアップのピッチ後、三井不動産リアルティのメンバーから数多くの質問が飛び交っているのが印象的だった今回。懇親会でも、三井不動産リアルティのメンバーと登壇者との会話がそこかしこで見られ、ベンチャー共創事業部としては今後も、こうしたスタートアップとのマッチング機会創出の場を用意していこうと考えています。