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2024.03.18

日本から世界へ羽ばたくスタートアップを!世界最大級のプレシード投資家「Techstars」によるアクセラレーションプログラム「Techstars Tokyo」キックオフイベント開催

 【本記事のポイント】
・Techstarsが日本で初めて行うエクイティ方式のアクセラレーションプログラム「Techstars Tokyo」とは
・「Techstars Tokyo Kick-off」の様子をレポート
・日本人起業家が感じるアクセラレーターを活用するメリットとは


 2024年2月13日、スタートアップを対象としたアクセラレーションプログラム「Techstars Tokyo(テックスターズ・トーキョー)」のキックオフイベントが、東京ミッドタウン八重洲のイノベーションフィールドで開催されました。多くの聴衆を集めたイベントでは、本プロジェクトを推進する関係者が登壇し、プログラム概要や展望を説明するとともに、ゲストの皆さまとその価値・意義を熱く語り合いました。当日の様子をお伝えします。


 Techstarsは2006年にアメリカで設立以降、4,000近くの企業に投資し、約20のユニコーン企業を輩出しているトップアクセラレーターです。世界36都市でアクセラレーションプログラムを展開しています。今回の「Techstars Tokyo」は、日本初・アジア圏唯一のエクイティ方式のアクセラレーションプログラムです。

 Techstars Tokyoの開催は、日本貿易振興機構(JETRO)が経済産業省や東京都とともに取り組んでいた「アクセラレーター及びベンチャーキャピタル(VC)誘致」の第1号の事例です。JETROの取り組みを受け、三井不動産ではTechstarsとパートナーシップを締結し、出資や場所の提供のほか、ベンチャー共創事業「31VENTURES」で培ったノウハウやネットワークで、プログラムに参加するスタートアップを支援します。

 2023年12月には、グローバルを目指すスタートアップを対象として、本プログラムの参加募集をスタートしました。シード期の12社を選抜し、1社あたり12万ドルを出資、そのうえでアクセラレーションプログラムを開催して事業成長の加速を図ります。募集開始から約3カ月ですでに400社を超える応募があり、2024年3月27日の締め切りまでにさらに多くの申し込みが予想されます。

 そして、プログラムの募集活動の一環として開催されたイベントが「Techstars Tokyo Kick-off。JETROと三井不動産が主催し、東京ミッドタウン八重洲のイノベーションフィールドには、応募を検討しているスタートアップ、投資家、企業関係者ら200名を超える参加者が集まりました。当日は、プログラムの関係者によるプレゼンテーション、パネルディスカッションを第一部、交流会を第二部とした二部構成にて行われました。

世界最大級のプレシード投資家Techstarsとともに、官民連携でグローバルに活躍するスタートアップを増やしていく

 冒頭、JETRO理事の仲條一哉氏よりご挨拶があり、「JETROでは20年以上、スタートアップを日本から海外へつなぐ支援をしてきましたが、近年はとくにスケールが大きくなっていると感じます。これまで世界に向けた商品・製品が日本国内だと開発しにくいところがあって、そういうボトルネックを解消するために、私たちは海外のエコシステムのプレーヤーに『日本を見てください』とお話してきました。Techstars Tokyoはその結果のひとつです。シードアクセラレーターで世界トップクラスの企業を日本にお迎えし、腰を据えたプログラムが始まることをうれしく思います。今後、スタートアップ支援の動きが加速すると信じています」と話がありました。

日本貿易振興機構(JETRO)理事 仲條一哉氏

 

 続いて、東京都副知事の宮坂学氏が登壇。GDPや人口、安全性指数、企業の本社数などの都市ランキングで東京都が上位に入っているデータを示しながら、「東京は大きなポテンシャルを秘めた街です」と強調する一方で「ポテンシャルに見合ったスタートアップエコシステムはまだないと思います。もっともっとやれるはずです」と今後への展望を語りました。

 東京都はスタートアップ支援を行う約80人規模の部署を立ち上げ、ユニコーン企業数、起業数、行政とスタートアップの協働プロジェクト数、それぞれ10倍を目指す「未来を切り拓く10×10×10のイノベーションビジョン」を策定。ビジョン実現を目指し、さまざまな活動を展開しています。宮坂氏は「グローバルに活躍するスタートアップを増やすために、Techstarsは重要なパートナー」と強調しました。

東京都 副知事 宮坂学氏

 

 続いて、Techstars CEOのMaëlle Gavet(マエル・ガヴェ)氏が登壇しました。

 Gavet氏は、ユニコーン企業になった世界各国のスタートアップ数(2022年10月時点)を紹介。アメリカが644社、全体の54.07%を占めて1位であり、一方日本はわずか6社、全体の0.5%の17位である現状を説明し、「日本は世界3位の経済大国。スタートアップエコシステムでも世界上位に位置できるはずです。私たちは皆さんと一緒に数字を大きく変えていきたいと考えています」と意気込みを語りました。

Techstars CEO Maëlle Gavet氏

 

 Techstars Tokyoでは、プログラムに選抜された12社を対象に2024年7〜9月の3カ月間で集中的なブートキャンプを行い、50人以上の各分野のメンターが具体的な問題解決を支援する、世界最高峰のプログラムが提供されます。そして同年10月3日には、成果発表会であるデモ・デーを開催予定です。

 Gavet氏は「私たちが投資した企業のうち、ほぼ4社中3社が、その後3年以内に資金調達ラウンドを行っています。デモ・デーには、日本だけではなく世界屈指のベンチャーキャピタリストやエンジェル投資家をお招きします」と自信をのぞかせます。

 スタートアップエコシステム協会の藤本あゆみ氏も登壇し、Gavet氏と「グローバルスタートアップエコシステム構築成功の秘訣」と題してディスカッション。英語の習得や、失敗しても挑戦し続ける重要性などについて語り合いました。

左:スタートアップエコシステム協会 藤本あゆみ氏、右:Techstars CEO Maëlle Gavet氏

多様なメンターとの濃厚なセッションと事業を展開する場の提供により、スタートアップの事業を加速

 次に、JETROイノベーション部の樽谷範哉氏、三井不動産ベンチャー共創事業部 小玉丈による「Techstars Tokyoが目指すもの」と題したトークセッションが行われました。

 「Techstars Tokyoによって日本のスタートアップが得られるものは?」との質問については 、「アクセラレーターと週5日で3カ月間、直接やりとりできるのは重要な機会です。製品のアイディア、販売およびマーケティング戦略などさまざまなメンターとのセッションを用意しています。私たちの役割は、それぞれのスタートアップが抱える問題を解決するために一番適したメンターとつなぐこと。大きな問題は、チームによって解決されるものですから」と話しました。

 小玉は、Techstars Tokyoにおける三井不動産の役割について問われると、「スタートアップに場所を提供します。我々は、オフィスビル、ショッピングモール、ホテル、物流施設、マンション、ゴルフ場にアリーナと、さまざまな不動産を日本だけでなく世界各国に持っています。多様なスタートアップと協業していく準備はすでにできています」と語りました。

 続いて、日本・東京を拠点にプログラムを開催する強みについて触れます。「みんな日本に来たがります。ビジネス旅行として魅力的な場所だということは、マーケティングのひとつの要素になる。今回はメンターだけでなく、スタートアップも国内外から募集しています」と話しました。

 また、「どんなスタートアップを求めているのか?」との質問に、小玉は「私個人の意見としては、逆境に強い人材と働きたいと思います。ほとんどの起業家は、時に困難な状況に直面しますから。成功するか、失敗するかはとてもシンプルで、そうした困難に打ち勝てるかどうかが重要なのです」と語りました。

スタートアップは成長スピードが最も重要。アクセラレーターを活用することは、言わば時間を買うこと。

 最後は、「日本人起業家が挑む、海外展開のリアル」をテーマとしたパネルディスカッション。オンライン決済のワンストップソリューションをグローバルに展開するOPN Holdings CEOの長谷川潤氏と、40カ国以上で利用されるソフトウェアテスト自動化プラットフォームを手がけるオーティファイCEOの近澤良氏、モデレーターとして多摩大学大学院客員教授、MBAコースで起業家育成に携わる本荘事務所の本荘修二氏が登壇しました。

左:オーティファイ 近澤良氏、中央:OPN Holdings 長谷川潤氏、右:本荘事務所 本荘修二氏

 長谷川氏は、友人がいたことを理由にタイで起業した経緯を説明したうえで、「OPNを始める前、複数の会社を経営するなかで、ノウハウはあって当たり前、重要なのは『Know Who(ノウフー)』だと学びました。つまり、コネクションがないと事業展開は難しい。Techstars Tokyoで、プログラムを通じていろいろなつながりを得られることは、成功の可能性を高めることにつながります。また、アクセラレーターを活用すれば、ある意味、時間を買うことができる、タイムスリップできるツールだと思います」と、実体験をもとに語りました。

 サンフランシスコのトップアクセラレーター、Alchemistの日本人初の卒業生である近澤氏は、「VCや顧客候補なども含めてさまざまなネットワークにアクセスできるというのがアクセラレーターの一番大きなメリットだと感じました」と過去の経験を振り返りつつ、「日本からグローバルマーケットへ出ていこうとすると、前例がないため極端に情報がないというケースがありますが、今後Techstars Tokyoコミュニティのなかで経験や知恵がシェアされることで、スタートアップが海外展開にあたって同じような失敗を繰り返すことはなくなると思います。 そして、この先5年、10年で日本からユニコーンが出てくるといいと思いますし、もちろん我々もそのひとつになりたいですね」と期待を述べました。

 それぞれが、Techstars Tokyoが日本のスタートアップをさらに盛り上げることへの期待を述べ、第一部は盛況のうちに幕を閉じました。プレゼンテーションやパネルディスカッションを通じてTechstars Tokyoのプログラムがより明確になるとともに、グローバルで活躍するスタートアップ経営者からアクセラレーターの活用方法やメリットが伝わることで、本番への期待が高まっていく様子を感じました。

 第二部の交流会でも、本イベント参加者同士での活発なネットワーキング、意見交換がなされ、熱量と期待を感じました。応募締め切りは3月27日。7月から始まるプログラムに向けて、引き続き数多くのスタートアップの皆さまからの応募をお待ちしています。