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2024.01.26

「出資は難しそう」から「絶対に出資したい」へ変化した理由とは SUPER STUDIOと取り組むOMOソリューションで目指す未来 ~SUPER STUDIO 代表取締役 CEO 林氏・執行役員 大谷氏 × 三井不動産 上窪 対談~

(写真:左から、SUPER STUDIO 林氏、三井不動産 上窪、SUPER STUDIO 大谷氏)

【本記事のポイント】
・当初、「難しそう」と感じていたSUPER STUDIOへの出資を31VENTURESが実行した経緯を解説
・出資実行と並行して進めたポップアップストア出店での学びと課題とは
・THE [ ] STOREオープンから3ヶ月経過(※)しての手応えと想定外の発見、および今後の展開
(※取材は2023年11月に実施)


三井不動産は、グローバル・ブレインと共同で運営するスタートアップ投資事業「31VENTURES-グローバル・ブレイン-グロースI事業」を通じて、統合コマースプラットフォーム「ecforce」の開発・提供や自社D2C事業を手がける「SUPER STUDIO」へ出資。OMO(オンラインとオフラインの融合)ソリューションを共同開発しています。2023年7月には、ECブランドが週単位で出店する次世代型ショップ「THE [ ] STORE」を東京・渋谷のRAYARD MIYASHITA PARK(以下、MIYASHITA PARK)にオープンするなど、取り組みを進めています。

SUPER STUDIO 代表取締役 CEO 林 紘祐氏、SUPER STUDIO 執行役員 大谷 元輝氏、三井不動産 ベンチャー共創事業部 上窪 洋平が、OMOソリューションの可能性や取り組みの手応えについて語り合いました。


<プロフィール>

株式会社SUPER STUDIO 代表取締役 CEO 林 紘祐氏
1987年、大阪府出身。関西大学卒業。Web広告代理店にマーケターとして入社後、ECサイトやサービスのグロースを多数担当。2014年にSUPER STUDIOを共同創業し、同社CEOに就任。現在は新規事業開発や外部アライアンスを率いる。

株式会社SUPER STUDIO 執行役員 大谷 元輝氏
1989年、東京都出身。青山学院大学卒業後、都内のITベンチャー企業に入社し、Webメディア事業のプロモーションを中心に従事。2013年に起業し、システム開発や動画制作事業を率いる。2018年よりSUPER STUDIOへ参画。現在は執行役員として、OMOプロジェクト「THE [ ] STORE」を全体統括している。

三井不動産株式会社 ベンチャー共創事業部 主事 上窪 洋平
在学中からロックバンドquizmasterのギター・ベース担当として日本と台湾で活動。解散後、大手監査法人での監査・FAS業務、日系金融機関NY支店での勤務を経験。2019年に当社へ入社し、CVC事業、新規事業開発、PR等に従事。


当初の「出資は難しそう」という印象から「絶対に出資したい」へ変化した理由

まずはSUPER STUDIOの事業について教えてください。

:事業としては、「ecforce」の開発・提供と、自社D2C事業の2つです。「ecforce」に関しては、EC/D2Cの売上・利益を上げることに特化したEC構築システム「ecforce」をメインに、付随する多くのアプリケーション・サービスでEC/D2Cの各フェーズを支援しています。EC/D2Cメーカーの業務効率化やEC運営の最適化を促しながら、データドリブンな事業運営の実現を支援し、直近ではオフライン進出の支援も始めています。オンライン・オフラインの垣根を超え、“ビジネス全体”を最適化する統合コマースプラットフォームとして、モノづくりのビジネス全体を最適化することを目指しています。

自社D2C事業については、食品D2Cブランドの「(ふつうの)ショップ」とアパレルD2Cブランドの「MEQRI」を企画・運営しています。「ecforce」を開発する上で徹底的なユーザーファーストを追求するために、ブランド企画や運営で培った知見・ノウハウを顧客へ還元しながら、システムの課題は「ecforce」の開発にフィードバックしています。この循環で、「ecforce」の本質的な価値の提供と顧客の事業成長を支援しています。

株式会社SUPER STUDIO 代表取締役 CEO 林 紘祐氏

SUPER STUDIOに出資を決めた経緯について教えてください

上窪:出資先の別のスタートアップ役員の方から「おもしろい会社がある」と聞いたことがキッカケでした。ただ、当社は本業でショッピングモールを展開しているので、SUPER STUDIOの事業をどうとらえるかは難しい部分がありました。つまり、商業施設とECがWin-Winの関係性になれるか。

それでも、ECが伸びていて、重要な領域であることは間違いないと思っていたので、2021年秋にまずお会いしました。初対面からすごく話しやすかったのが印象的でした。当社と「こんな取り組みをやりたい」というものが明確だったからです。

大前提として「ecforce」が圧倒的に魅力的なプロダクトであり、加えて、業績が著しく成長していて、経営者の皆さんもすばらしい。当初の「難しそう」という印象からすぐに「絶対に出資したい」と思い直しました。

SUPER STUDIOとしては三井不動産との協業にどんな可能性を感じましたか?

:会うことが決まった瞬間から、オフラインを活かしたECへのインパクトある施策で協業をお願いしたいと決めていました。オフラインを活用した施策はEC業界でずっと議論されてきたものの、当時うまくいっている事例がほとんどありませんでした。当社が戦っていくためには、オフラインの領域にチャレンジしていく必要があると思っていましたが、同時に自分たちだけで成し遂げられる領域ではないとも感じていました。三井不動産は、当社の今後のチャレンジを相談させていただく会社として、日本で一番だという印象でした。

一方で、大きな会社なので具体的にお話を進めていくのは相当難しいのではないかと思っていました。しかし、私たちとしても大変話しやすく、ファーストコンタクトからスピーディーに進められそうな会話の内容と雰囲気を感じました。

大谷:私たちが感じた話しやすさというのは、本音を包み隠さずにやりとりをしていただけたからだと思います。無茶をお願いすることもありますが、意思決定が非常に早く、親身なコミュニケーションをしていただきました。

株式会社SUPER STUDIO 執行役員 大谷 元輝氏

「普通に売れた」というのが最初の驚き。システムの課題も多く見つかった

2022年5月にはMIYASHITA PARK「&BASE」にて、スニーカーのD2Cブランド「GO WITH WHITE(現:DOUBLEW)」のポップアップストアを出店。「ecforce」を活用し、リアル店舗でありながらEC同様の顧客データの取得を図る実証実験を行いました

上窪:ポップアップについては、初回出資(2022年6月)とほぼ同時期で、このタイミングでたたみかけられるようスピード感を重視しました。「&BASE」は、常設店舗を構えるようなスペースではなかったので、フレキシブルに使いやすかったというのが施設選びのポイントでした。特に若い世代に対する発信力というのもMIYASHITA PARKを選んだ理由です。

大谷:MIYASHITA PARKの顧客属性を考えてアパレルが候補に上がり、最終的に「GO WITH WHITE(※)」に決まりました。「オフラインで実際に出店したらどんなデータがとれるのか」という初めての試みでしたが、MIYASHITA PARKを用意していただけるのはまたとないチャンスだと捉えていました。
(※現在はブランド名が「GO WITH WHITE」から「DOUBLEW」に変更されています)

ポップアップストアを展開してみて、どんな反響がありましたか?

大谷:「普通に売れた」というのが最初の驚きでした。一般的には、店舗を構えてから数年かけて認知を獲得し、だんだんと顧客が増えていくというのが定説だと思います。しかし、出店してみたところ、ブランドの既存顧客やその友人らが集まって盛り上がりを見せました。加えて面白かったのが、ポップアップの展開と同時にEC側の売り上げも伸びたことです。この結果には、オフライン施策への可能性を非常に感じました。

ポップアップストア出店当時の外観と店内風景

一方、リアル店舗で販売するために必要なオペレーションや決済システムの機能が数多くあるなど、システムの課題も多く見つかりました。「ecforce」はECでの販売に特化していたので、オンラインとオフラインをしっかりと区別できるシステムに設計し直す必要があるという課題が明確になりました。

店を作ることが目的ではなく、やるべきことは「新しい仕組みを創る」こと

初回出資後はOMOソリューションの共同開発を進め、その一環としてリアル店舗「THE [ ] STORE」をMIYASHITA PARKに2023年7月にオープンしました。その経緯とは?

上窪:SUPER STUDIOの方が、打ち合わせのときにある海外の記事を持ってきて「これ、やりませんか?」という話になったんです。それはD2Cのオフライン進出支援をしている米国スタートアップ企業に関する記事。リアル店舗に必要な物件、システム、人材採用、マニュアルづくりなどをすべて請け負うというサービスで「ゴーストリテーラー」と呼ばれていました。それを聞いて私もやりましょう、と。

三井不動産もOMOの取り組みはやっていますが、「リアルから入ってオンラインをどうしようか」と考えるケースと「オンラインのプロがリアルをどうしようか」という場合では見方が全然違うんです。当社にはリアルのプロはたくさんいるので、オンラインのプロの思考を学んで、仕組み化して、社内にとり入れていくのが私のミッションだと思っています。

そういう経緯で、形づくられたものが「THE [ ] STORE」やポップアップストアですが、店をつくること自体が目的ではないんです。私たちがやるべきは「新しい仕組みを創る」ことです。どのように顧客にリーチし、売上を高めていくか、新しい購買体験をどうやってつくっていくか、という部分が重要です。

三井不動産 ベンチャー共創事業部 上窪洋平

「THE [ ] STORE」での狙いについて教えてください

:リアル店舗を運営して初めて見えてくる課題や、メーカー側が求めている機能をスピーディーに実装していきたいと思っています。その先の狙いとして、三井不動産の商業施設に入っている企業で、ECにももっと力を入れていきたいというブランドと一緒に取り組んでいけたらと思っています。

上窪:マーケットとしてD2Cはまだまだ伸びると思いますが、リテールだとオフラインの市場はすごく大きいので、
SUPER STUDIOとタッグを組んでOMOの切り口でいかにうまく攻めていけるかというのは大きなテーマですね。

デジタルネイティブのD2C企業を中心に「THE [ ] STORE」を検討いただくことになると思いますが、同時に、伝統的なエンタープライズ企業にもOMOソリューションを使ってもらいたいという狙いがあります。それはさらに次の挑戦です。

THE [ ] STOREの店内と外観

大谷:オンラインでは「ecforce」をはじめ体制が整ってきているため、顧客であるEC/D2Cメーカーの売上が伸びていて、勝てるという自信が出てきています。まだまだハングリーに挑戦していくために、オフライン進出を支援したいと思っています。

EC/D2Cメーカーがなぜオフラインに進出しないかを調査すると、リソースやノウハウの不足に加え、リスクの高さが理由としてあがります。そこに私たちが切り込んで、EC/D2Cメーカーにとってリスクが低いカタチでオフライン進出できるようにすれば、可能性が切り拓けるのではないかと考えています。

「THE [ ] STORE」の出店先として、なぜMIYASHITA PARKを選んだのでしょうか

大谷:SUPER STUDIOとしては、MIYASHITA PARKにすごくこだわりがありました。大人気の施設で、多くのブランドが出店したいと願っても簡単にはできない。インバウンド需要も含めて伸びていくのがわかっていましたし、カルチャーの発信地という要素が強く、新しいコンセプトの店舗が入っても受け入れていただけるのではと考えていました。

MIYASHITA PARKで上手くいかなければ、他ではもっと厳しい状況になるだろうと思いましたし、当社にとって新しいチャレンジで後悔したくないというのもありました。

RAYARD MIYASHITA PARK

当初想定していた「ecforce」導入事業者以外からも数多くの問い合わせ

「THE [ ] STORE」オープンから3ヶ月が経ちました(※)。手応えについて教えてください
(※取材は2023年11月に実施)

大谷:現時点(2023年11月15日)で19ブランドが出店した実績があり、カテゴリーはアパレルやドリンク、ヘアケア、家電など様々です。そのほとんどがリアル店舗を持っていないブランドです。これまでは費用やノウハウの問題で進出できていなかったオフラインで、いろいろと挑戦していただくことができています。その点は手応えになっています。

また、既にリアル店舗を持つ大手のブランドからも問い合わせいただいています。中には、継続して複数回出店されるブランドもあるので、そうしたブランドには「THE [ ] STORE」の取り組みを評価いただいているのかなと思います。2023年10月時点で、出店ブランドの枠は2024年2月頃まで埋まっています。

当初想定していたのは、「ecforce」を導入いただいているEC/D2Cメーカーのみでした。しかし、別のシステムを使っているけれど、「THE [ ] STORE」へ出店するために新規で「ecforce」の契約をいただいたブランドも複数いらっしゃいます。OMOソリューションを起点に、「ecforce」の顧客層が広がりつつあります。

上窪:オペレーションもしっかり確立されてきて、日増しによくなっている感覚はありますね。施設側としても、お客さんに来ていただけて、その方々が他の店舗に行くというような波及的な効果も生まれていることもうれしく思っています。

想定外の驚きや発見はありましたか?

大谷:出店したブランドからの声で想定外だったのは、「THE [ ] STORE」に出店すると記者発表会の場としても使えるため、コストパフォーマンスが高いというものでした。各ブランドが一生懸命考えられて、オフライン進出を攻略しにきている印象があります。

プロテインを展開する「ULTORA」さんは、「THE [ ] STORE」出店時にはECで販売している商品ではなく、ULTORAのプロテインを使ったオリジナルドリンクを提供していました。販売商品を売るのではなく、リアル店舗だからこそ実際に商品を体験して欲しいというのが狙いでした。皆さん、リアル店舗の出店に対してクリエイティブに考えられています。

今後の展開をお聞かせください
 
大谷:「THE [ ] STORE」のプロジェクトで見出した課題を解決していくことで、顧客であるEC/D2Cメーカーに価値を還元できる、より研ぎ澄まされたソリューションにしていきたいです。また、三井不動産との協業で、これまで関わりの少なかった顧客層とも接点を持ちたいと考えています。オフライン進出の支援だけでなく、オフラインで成功しているブランドのオンライン進出の支援という逆の目線でも、当社が協力することで大きな規模のビジネスに昇華していけたらと思っています。
 
上窪:「THE [ ] STORE」でしっかりとプロトタイプをつくっていきたいですし、狙うのは当然、さらに大きなスケールにしていくこと。当社の他の商業施設への展開も狙っていきますし、もっと言ってしまうと、当社物件に限らず取り組みを広げていくことで、当社とSUPER STUDIOで共同開発するOMOソリューションが、商業施設やECブランドのプラットフォームになるような大きなビジネスにしていきたいと思っています。