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【31VENTURES CVC】OVERVIEW ―キャピタリストが語る、CVC全体像- 後編

スタートアップのサービス・ビジネスモデルと三井不動産のリソースを掛け合わせ、新たな事業の創出を目指す三井不動産31VENTURES。31VENTURESが軸とする3つのソリューション「FUND」「WORKSPACE」「COMMUNITY」のうち、今回は「FUND」領域を担うCVCの全体像について、前後編の2回に分けて核心に迫ります。
前編でお伝えしたチーム体制やファンド概要に続き、後編では、出資のプロセスやCVCの展望について、キャピタリストの江尻修平が語ります。
スタートアップに投資決定を行う際のフローを教えてください。
初回の面会から投資実行まで、2カ月程度が標準です。
最初の2〜3週間で、フィナンシャル面をGB社に見てもらいつつ、三井不動産としてどういう協業ができるか、しっかり議論します。スタートアップ側とディスカッションもさせていただきますし、その時点から事業部との引き合わせもいたします。
おおむね整理されたら、いわゆるファンドとしての意思決定フローに入ります。三井不動産としての意思決定は、CVCとして機動的に動けるように、ある程度簡略化しています。その後に、GB社も含めたファンドとしての意思決定機関で、最終的な決定を出すという流れです。スタートアップの皆さまとご一緒できる機会を逃さないためにも、スピード感は意識しています。

投資決定の判断軸はどういったところにあるのでしょうか。
31VENTURESは、フィナンシャルリターンだけを追い求めているファンドではないので、判断軸は「どういった協業ができるか」といったところに尽きると考えています。ただ、すぐに協業する必要はなく、将来を見据えて、協業を一緒にやっていけることが分かれば問題ありません。
また、いわゆる不動産テックのスタートアップだけを対象にしているわけではありません。実際にVRの会社や、農業の会社にも出資しています。商業施設やビル、物流倉庫など幅広いアセットがある分、いろいろなスタートアップの方とご一緒できるフィールドがある会社なので、領域に縛られず、お話させていただけたらと思います。
そして、既存事業に関わることだけではなくて、新規事業領域、新しい取り組みもやっていきたいと考えています。その種や土壌を探しに行くのが、我々ファンドチームのミッションだと思っています。将来を見据えて「こういう領域があるんじゃないか」と踏み込むことも、頑張ってやっていきたいですね。
そのためには、キャピタリスト一人一人が、自分の興味分野を深堀りしていく必要があるのかな、と考えています。新しい領域にチャレンジしていく際には、個人の興味ややりたいという気持ちなど、強い動機が求められてきますから。
31VENTURESのCVCの特徴・強みはどこにあるのでしょうか。
チームには、プロパー社員だけでなく、もともとスタートアップ界隈にいた外部の人材もいます。三井不動産のカルチャーに寄り過ぎず、外からどんなふうに見えるかなど、バランスのいいメンバーが、三井不動産とスタートアップの架け橋になるのかな、と思います。
また、不動産業がバックボーンですので、「長い目で大きなお金を張る」というカルチャーは、大元にあると思います。不動産の投資は、何十億かけて作って、何年かで回収していくようなモデルなので、長期目線で考えます。計画ができて、建てられるのは数年後というようなこともよくありますから、こういった長期目線は、スタートアップ投資でも生きると思いますね。

求められる役割や苦労する点を教えてください。
一番大変なのは、協業を作る上で、必ずしも顕在化したニーズがあるわけではなく、答えがあるわけでもないので、社内の事業部とスタートアップ、その両方を知っている我々が想像力を働かせて考えていかなければならないところです。「ここがこの会社の面白いポイントで、だから当社にとって必要だ」と言えるようにならなければいけないので、我々も最新の技術やサービスのキャッチアップに努めています。
その上で、事業部に火をつけ、スタートアップの皆さんにも共感してもらわないといけないので、営業にも近いような役割を担っているかもしれません。提案を作って、事業部、それからスタートアップの皆さまにお声がけして、一緒に協業を作っていくというところは、最もコアであり、最も大変な部分です。
今後CVCとして実現していきたいことを教えてください。
31VENTURESができて6年が経ちましたが、まだまだ迷いながらやっていて、もっといろいろなスタートアップの皆さんと協業を生み出していきたいですし、出資もご一緒していきたいと考えています。
今、特に注力していきたい領域としては「脱炭素」があります。これは、三井不動産全体としても取り組むべきところで、なおかつ、我々が持っている全てのアセットにも関わります。ビルや住宅は非常に電力消費も多いので、カーボンニュートラルに向けての取り組みは、積極的に行っていきたいですね。そこに必要な技術やサービスで、ぜひスタートアップの皆さまと一緒に連携していきたいと思っています。
