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2021.06.16

ナレッジ・マーチャントワークスがTHE E.A.S.T.日本橋富沢町に移転を決断した理由、そして入居後感じた大きな魅力とは

ナレッジ・マーチャントワークスは、2021年4月にオープンした「THE E.A.S.T.日本橋富沢町」に入居している気鋭のスタートアップだ。同社が提供する店舗マネジメントツール「はたLuck®︎」は、三井不動産グループの運営するららぽーとや三井アウトレットパークにも導入されている。

「THE E.A.S.T.日本橋富沢町」の運営を担当するのは、31VENTURESの塩畑友悠氏だ。31VENTURESは多彩な支援パートナーと協力し、事業のメンタリング、積極的なサービス導入、販路開拓といったさまざまな角度から、スタートアップをエンパワメントし協業を仕掛けている。

ナレッジ・マーチャントワークス株式会社代表取締役の染谷剛史氏と塩畑友悠氏に話をうかがった。

<プロフィール>
染谷 剛史 ナレッジ・マーチャントワークス株式会社 代表取締役CEO
98年にリクルートグループ、デジットブレーンを経て、03年にリンクアンドモチベーション入社。サービス業の採用・組織変革コンサルティングに従事し、2012年には同社執行役員に就任。以後も新規事業開発を担う。2017年、ナレッジ・マーチャントワークス株式会社を設立し、代表取締役CEOに就任。2019年7月にチェーン店企業の生産性向上支援アプリ『はたLuck』をリリース。

塩畑 友悠  三井不動産 ベンチャー共創事業部 主事
オフィスビル事業におけるテナントとの新規サービス開発、社内新規事業であるシェアオフィス「WORK STYLING」の立上げを経験。 現在は「E.A.S.T.構想」を掲げ日本橋を中心とした東京の東側におけるスタートアップエコシステムの構築を推進中。

「そっか、俺は大人起業家か」E.A.S.T.構想への共感が入居の決め手に

THE E.A.S.T.日本橋富沢町への入居を決めた理由を教えてください。

染谷 東京の東側にあたる富沢町や人形町のエリアは、人の生活感があるのがいいな、と思っています。老舗の会社も残っていて、保育園や塾もあって、朝にコンビニで買い物をしてオフィスに向かうとき、子どもたちと出会うようなシーンもあって。オフィスの1階にあるカフェで一般のお客さんが出入りしているのがまた良くて、街に馴染むんです。僕たちは、サービス業のお客様を担当している会社なので、日常が見えなくなるのが怖いと思っているんですよね。

塩畑 私たちは「E.A.S.T.構想」を掲げ、東京の東側エリアを国内最大のスタートアップ集積地にしたいと考えています。スタートアップと言えば渋谷区や港区という既存のイメージもあると思いますが、大企業も多く存在している中央区や千代田区といった東側エリアで、イノベーションをもっと起こしやすいまちづくり、雰囲気づくりをしていきたいんです。

特に、若者の多い西側に対して、東側エリアでは「大人起業家」のメッカとなることを目指しています。

また、三井不動産も本社が日本橋にあるのですが、そうした大企業の中での事業開発も推進していきたい思いがあります。スタートアップのみなさんと協業することももちろんあるし、一方で大企業の中の人材がイントレプレナー、社内起業家のポジションとなって、どんどん活性化していってもらいたいです。私自身もそうなっていきたいという思いがあります。

染谷 「E.A.S.T.構想」のコンセプトが僕に響いたのは入居の大きな理由でした。「そっか、俺は大人起業家か」と(笑)。前職のリンクアンドモチベーションのとき、1年ほど投資部門でベンチャーを何社か担当していたのですが、やはり若い方たちが多く、渋谷界隈にオフィスを構えているのが当たり前、という雰囲気がありました。 40歳になって起業した時に自分がそこにいくことに違和感があったのと、もともとリクルートでのキャリアのスタートが日本橋エリアを担当する営業で、僕の中でキャリアの成功ストーリーを歩めた場所だったということもあり、直感的に縁起がいいと思いました。

ナレッジ・マーチャントワークス株式会社 代表取締役CEO 染谷 剛史氏

THE E.A.S.T.日本橋富沢町がオープンすることを、染谷さんはどのように知ったのでしょうか?

染谷 2020年7月頃にオンラインイベントで塩畑さんと知り合って、Facebookでつながっていました。その後、12月にメッセンジャーで「こういう拠点ができますけど、興味ありますかね?」みたいな本当にライトなメッセージと、資料をいただいたんです。ただ、正直なところ、最初は「三井さんの物件って(家賃が)高いよな」と思って資料をきちんと読めていませんでした(笑)

塩畑 そうですね。最初のお返事は 「資料拝見します!」でした(笑)。移転したばかりだったことも存じ上げていましたし、入居されるのは難しいと思っていたんです。しかし、1週間ほど経って前向きなご連絡をいただいて、私たちのフロアがざわめきました。     (笑)

染谷 9月くらいにお台場のSOHOに移転したばっかりだったんですよ。その前に浜松町で広いオフィス借りていたのですが、コロナ禍になって、僕一人しか出社していないのに高い家賃を払っていて、無駄だなと思って。

そんなタイミングではあったのですが、塩畑さんからいただいたパンフレットを最後まで見たんです。賃料だけでみると当時移転したSOHOと比較してみると家賃はちょい高いくらいで、むしろゆりかもめの高い交通費も考慮すると、トータルコストは安くなるのではと。そこで担当者に「全員の交通費とSOHOの家賃代を足したらこの金額とどっちが高いか、速攻計算して!」と言って計算してもらったところ、「安いかもしれません」と返ってきたので、塩畑さんに「すみません、本気で入居するか考えます」とご連絡したんですよね。 移転するにあたってセキュリティ面などを確認する必要はありましたが、「三井さんだったら大丈夫だろう」と安心感もあって、僕の中ではその時点でほとんど意思決定してしまっていました。

“あえて無駄・余白を作るため”にオフィスは欠かせない

オフィスを持つことに対しての思いを教えてください。

染谷 塩畑さんからメッセンジャーをいただいたとき、実は「このままリモートでやっていて、本当にスタートアップとして成長を遂げられるような組織を作れるんだろうか」と悩んでいた時期だったんです。

リモートは、徹底的に仕事が効率化されます。人から話しかけられもせず、集中して仕事ができたり、ミーティングで会議室を押さえたり移動したりといった物理的な制約も、Zoomならなくなります。一方で、何か“駄弁る”だとか、趣味を知るだとか、一緒に働く人の人となりを知ることによる安心感や仲間意識があると、もう一段レベルの高い効率性を追求できるんですよね。

特に新しく入社してくる人たちが、リモート環境ではうまくオンボーディングできていないことを課題に感じていました。また、“判断する場面”を共有できないことが、この会社らしい判断軸や価値観を共有できないので、この案件をどう判断したらいいのか迷わせてしまったり、もうすでに議論されていたのかどうかも分からないから、質問もできないような感じありました。

人とのつながりを作り出す上で、あえて無駄や余白を作るためにオフィスに来てもらって、積極的に交流してほしい。オフィスに来ることを会社が推奨するようなかたちにして、効率と能率のバランスを取って、私たちらしい働き方を模索しています。

塩畑 THE E.A.S.T.の設計とコロナ禍が重なっていたこともあり、オフィスについては社内で一番真剣に考えてきた自負があります。特にスタートアップのオフィスの使い方について、起業家の方や働いている方にアンケートやヒアリングをしました。 会社のアイデンティティを保ちつつ、会社の方針や向かっているゴールに向けてどう社員を引っ張っていくのか。自宅で一人でやっていて気持ちが塞いでいるような社員をリモートでどうフォローするか。結論としては、「小さくなったとしてもリアルなオフィスは絶対に必要だ」というお話が大半でした。

三井不動産 ベンチャー共創事業部 主事 塩畑 友悠氏

世の中の課題からつながる2社の信頼関係

協業はどのように進捗していますか。今後の展望と併せて、教えてください。

染谷 三井不動産さんに開発会社さんもご紹介いただき、イギリスのBaaS(Banking as a Service)をやっているベンチャー企業とも協業を検討して行っています。僕らだけではイギリスの会社にコネクトできないですからね。三井さんのおかげで、マニュアルを作っている会社さんとも協業が始まります。僕らだけではリーチできないような会社さんでも、三井さんが入ってくれることによって、向こうも本気で会ってくれる印象を受けています。

塩畑 入居されているスタートアップに対して、企業の紹介は頻繁に行っています。私たちが出資しているスタートアップのみなさん同士だけでなく、何かしら接点を持ってるスタートアップはたくさんいるので、「ちょっと話してみます?」と声をかけることが多いですね。そういった場をセットしないことによる機会損失に危機を感じているので、スタートアップのみなさんさえお手間でなければ、積極的にご紹介しています。

染谷 今回、三井不動産さんのららぽーとや三井アウトレットパークなど全国約40の商業施設へ僕らの店舗マネジメントツール「はたLuck®︎」を導入していただきました。商業施設で働く10万人の方々に、働きやすい環境と豊かなコミュニティを提供する「三井ショッピングパーク Staff Circle (スタッフサークル)」という取組みです。なかでも、デジタル入館証は、今回新たに三井さんと開発した機能です。

デジタル入館証では、入館時間と属性のデータと紐付けることで、様々な分析が可能になります。例えばスタッフ向けのイベントのご案内をすることで働きがいを向上したり、駐車場のデータと紐付けることで「本来ならばもう1時間早めに店舗にスタッフがいれば、混んでいる時間に万全の接客体制でいられる」ということ分かるなど、データとデータを掛け合わせると実は施設の中でさまざまな効率化が図れることがわかっています。商業施設のDXは、まだまだいろんなことができると思っています。

前職で僕がスタートアップ投資をやっていた経験から、協業が本当に成就する確率は非常に低いことがわかっていました。どこかのタイミングで、どちらかが「話が違う」ということになって、頓挫する。実際に、今回僕たちにもピンチがありました。最後の最後のところで経営会議で通らないと。しかし、そのとき「ここで折れたら、僕らがこの1年半、語ってきたことは何になるんですか!」という話を三井さんも含めたプロジェクトメンバー全員としたんです。これを言えたのは、プロジェクトを通じて、単なるツールの導入を超えて、成し遂げたい世界を共有し、関係性を築けていたからだと思います。それまで商業施設本部や三井不動産商業マネジメント社で担当してくださった“アツい”方々と議論をかさね、定期的に食事にも行って目的を確認していたので。

やると決めたらとことんやる。それを実現するためには、発注した側・発注される側という関係性だけではうまくいかない場面を見てきたので、今後も良い関係性を築いていきたいですね。

塩畑 そういったリーダーシップ、プロジェクトを引っ張っていく馬力は、私自身も見習っていきたいですね。

今はスタートアップのみなさんが提供されているサービスを導入してバリューアップしていくケースが多いのですが、当社でまずは企画を立ち上げ、それに対してスタートアップにご協力いただいて事業に仕上げていくケースも増やしていきたいと思っています。

三井不動産グループには、一度失敗しても再びチャレンジして、プロジェクトの実現に向かって突き進んでいく文化があります。大企業の社員である私たちも、起業家マインドを持ち続けて、スタートアップのみなさんと協業していきたいと思います。

(取材日:2021年5月)