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2017.08.16

日本橋エリアでドローン実証実験 31VENTURESによるイスラエルベンチャーの日本進出サポート

CVCファンドの出資先であるイスラエルのベンチャー企業「Dronomy Ltd.(ドロノミー)」が本格的な日本進出を開始。その日本進出の一環として実施したのは、2017年7月に行われた日本橋の建設現場でのドローン飛行の実証実験です。都心の日本橋エリアでのドローン飛行はどのようにして実現したのか。無事実験を終えた今、所長として現場を管理する鹿島の高橋佳之さん、技術周りを担当する同建築管理本部の國近京輔さん、ドロノミー代表のOri Aphek(オリ・アフェック)さんと31VENTURESの能登谷寛をまじえ今回の実証実験や、日本進出における31VENTURESの支援体制を振り返っていただきました。


・髙橋 佳之 鹿島建設株式会社 日本橋室町三丁目地区第一種市街地再開発事業A地区新築JV工事事務所 所長
・國近 京輔 鹿島建設株式会社 建築管理本部 建築工務部 工事Gr 課長
・Ori Aphek(オリ・アフェック) Dronomy Ltd. CEO
・能登谷 寛 三井不動産株式会社 ベンチャー共創事業部 事業グループ 主事

支援先ベンチャー企業の日本進出をトータルサポート

2016年、CVCファンドからドロノミーに出資を実行していますが、ドロノミーの支援に至る決め手はなんだったのでしょうか。

能登谷 投資先を考えるときドローンは重点投資領域と定め、情報収集を重ねてきた分野でした。数十社の製品を見てきましたが、ドローンに深い知見を持つ関係者が技術力を高く評価したのがドロノミーだったんです。高精度な完全自律飛行の制御ソフトを備えていること、内蔵カメラで撮影・取得した情報から3Dデータを作成できること、データをクラウド上で管理・閲覧できることなど、サービス、パッケージとして見たときに、総合的にとてもよくできている、と。また、ドローンは建設現場で活用できる技術である点でも、この分野に投資することは、不動産事業を展開する我々のビジョンに合致しています。

今回はドロノミーの日本進出ということで、31VENTURESが中心となりサポートを行ったと聞いていますが、具体的にどのようなサポートをしたのでしょうか。

能登谷 今回、オリさんには日本に2週間程度滞在いただいています。その間に営業先となり得る会社との商談機会を提供したり、イベントへの出展を手伝ったりしてきました。7月に実施した、東京都中央区日本橋室町3丁目の建設現場における実証実験も支援のひとつです。

都会のど真ん中、日本橋でドローンを飛ばす
――こんな挑戦はなかなかできない

2017年7月に行われた実証実験は、ドロノミーが開発した自律飛行技術を搭載したドローンにて建設現場を空撮。工事の進捗管理に、空撮データから作成された3Dモデルの活用の可能性を探る実験でした。実証実験はどのような流れで進められてきたのでしょうか。ここからは、鹿島さんにもお話に加わっていただきます。

國近 2017年3月、三井不動産から「新しいドローンの技術があり、建設現場で飛ばしてみたい」といったご相談をいただいたのが始まりです。後日、能登谷さんやオリさんたちから、私と現場所長・高橋とで技術的な話を伺いました。市街地の建設現場での空撮や施工中の建物の3Dモデルの作成が、安全に実現できるのであれば、とても素晴らしい技術だと感じました。実験への協力を前向きに検討したく、専門の部署や技術研究所など社内への情報共有・確認を取ることから始めました。

建設業の現場では近年、ドローンの活用が進んでいます。ただ、日本橋のような市街地で飛ばすのには、周囲には人や建物などが多いことから、当然のことながら相当な配慮や慎重さが求められそうです。

高橋 市街地でドローンを飛ばす実験となっても、いきなり大きなリスクを取るわけにはいきません。当社としても安全性の確保は最重要事項です。市街地を通行する一般の方や車両へ危害を加えることは、絶対にあってはなりませんし、現場内で働く建設作業員や従業員の安全を確保できるかどうか、現場内の人や鉄柱など各種障害物を避けて飛行できるかなど、安全性や性能面において、検証しなければならない課題は山積みでした。

國近 課題や必ずやるべきこと、想定外の事態が起こったときのことなどを一つひとつ洗い出し、社内の関係部署と連携し、一つひとつコンセンサスを得ながら進めてきました。その過程で、さまざまな届け出や近隣へのコミュニケーションなど、三井不動産には多大な協力をしていただいて。技術的な確認はその次のステップでした。

高橋 技術的な確認を行うために、日本橋の建設現場と同等の飛行内容を可能な限り再現できる当社の広大な敷地で、ドロノミーが安全に飛行するための項目を定めて、事前に検証することにしたんです。

それが、実証実験の約1カ月前、小田原市にある機械技術センターで行ったというテスト飛行ですね。

高橋 はい。当社の技術者と技術研究所の研究員、その他、専門的な知識を持つメンバーを集めて行いました。テスト飛行結果から確認できた安全な飛行条件のもと、適切な飛行ルートを設定し、本番で建設現場内を飛行させました。

細かい結果検証に入るのはこれからだと思いますが、実証実験を無事終えた今、どんな感想を持っていますか。

高橋 人にぶつかった、電源がなくなり途中で落下した、操縦不能でどこかへ飛び去った……など、ドローンによる事故を伝える報道もあることから、市街地でドローンを飛ばすのは敬遠されがちです。私たち自身も、日本橋でドローンを飛ばすまで、テスト飛行に関わる事柄のほか、多大な労力をかけてきました。例えば、航空法で定められた飛行禁止区域に該当しないか、国・地域のルールに抵触していないか、万一のときに各保険は適用されるかといった諸々の確認や、国への申請、近隣地域への情報共有・説得、飛行中のカメラ向きの調整など、膨大な情報収集や調査をし、たくさんの手順を踏んで、本番にこぎつけることができました。ただ、市街地でドローンを飛ばすまでのプロセスを明確にでき、無事に飛ばせるんだと実証できたのは、今回の実験で得た大きな収穫だと思っています。

鹿島の社内の反響はいかがでしたか。

高橋 当社では、ロボティクス技術や情報通信技術をはじめとする、新しい技術を多く活用し、建設現場内の安全性の確保や業務効率化、人材不足などの課題解決に活用できる開発・研究を日々行っています。そのひとつがドローンですから、社内の反応も良好です。ドローンが集めた情報は建設現場の生産性向上に有用となることでしょう。今後も三井不動産やドロノミーとディスカッションを継続し、集めたデータの活用方法について、深く検証していくつもりです。

ドローンを活用することで、三井不動産の社員の方たちの働き方も変わりそうですね。

能登谷 そうですね。もし今後、いろいろな建設現場で活用いただけるようになれば、弊社の社員が現場のモニタリングを行うプロセスが大きく変わると予想しています。例えば、精度の高いデータを、専門的なソフトを使うことなく、自分のパソコン上で閲覧できるのは魅力ですよね。業務の内容的に、毎日現場へ足を運ぶ必要のある社員もいますが、必ずしもそうでない社員もいるでしょう。その動きが進めば、働き方改革につながるのではないか、と思っています。

日本の企業と関わって見えてきた課題と大きな期待

続いてはドロノミーのオリさんに伺います。実証実験を無事終えた今、そして実験をサポートした2社のお話を聞いて、どんな思いがありますか。

オリ 三井不動産・鹿島の2社には、実証実験に至るまで非常に丁寧なプロセスを経て、実験を成功に導いていただけたことを心から感謝しています。ドロノミーを市街地の建設現場で活用し、安全性の確認をさせていただいたことは、我が社にとっても大きなプラスとなりました。細かい検証はこれからですが、私たちのデータが建設会社や不動産会社に対し、確かな価値を提供できる可能性を見出すことができたと思います。

今回の実証実験のほか、滞在中日本ではどのような活動を行ったのでしょうか。

オリ 実験を機に来日して2週間になりますが、実証実験のサポートのみならず、三井不動産が想像を超える手厚い活動支援を幅広くしてくださったおかげで、ドロノミーに興味を持ってくださっている10社以上の企業とつながりを持つことができました。販売を支援してくれるパートナー、撮影をサポートしてくれるパートナー、実際にドロノミーを用いてくれるパートナーなど、すでに動き始めている企業もあります。この2週間、日本のマーケットは新しい技術に対し、とてもオープンだと気づいたのは大きな発見です。

能登谷 三井不動産は不動産開発をしていることから、建設業界でネットワークがありますし、三井不動産グループ全体としても幅広い事業領域を持っています。それらの強みを活かし、ドロノミーを活用してくださる可能性のある建設企業、そのほか関連する企業へ、オリさんとともに私たちも一緒に提案を行いました。

ブース出展のサポートも行ったようですね。

能登谷 そうですね。営業先を拡げるためにも2つのイベントでのブース出展を行いました。ドロノミーはまだ日本支社がないためブース出展の手配や、ブース運営なども一緒に行いました。また広報にも力を入れ、実証実験ではテレビやWEBなど多くのメディアで取り上げていただき、ドロノミーの認知を大きく拡げることができたと思っています。

たくさんの収穫がありましたね。一方で、課題に感じていることはありますか。

オリ 日本の企業との信頼関係の構築です。日本でビジネスを進めていく上で、とくに重要視されるのは信頼関係を築くことであり、それがきちんとできて初めて、スタート地点に立てるのでしょう。ただ、互いに信頼し合うことができれば、その後は継続的に取引できるだろうと考えています。今回の実証実験をはじめ、「入口」を作るところまでは、三井不動産が尽力してくれました。ここから日本の企業と確かな信頼関係を築いていくのは、私たちドロノミーが気を引き締めて取り組む部分かなと思っています。

日本の企業と連携し、ビジネスが広がっていく未来が見えてきますね。10〜20年後、ドローンはどのように活用されている、と考えていますか。

オリ 建設現場ではドローンが上空や周辺だけでなく、建物内も普通に飛行するようになっていて、デジタルデータをリアルタイムで分析しながら、仕事を進めていく状態があたりまえになっているのでは、と考えています。三井不動産・鹿島とのパートナーシップが、それを最初に実現するチームになれば、これほど嬉しいことはありません。

想像するとワクワクしてくる未来ですね! 本日はありがとうございました。

(執筆:池田園子)取材日 2017年07月