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2016.08.05

異業種と出会い、イノベーションを生む共創事業を創り出す31VENTURES Clipニホンバシ

「31VENTURES」に集う企業の熱いストーリーを紹介する「MEET THE 31VENTURES」。今回は、「31VENTURES Clipニホンバシ」を舞台に定期開催しているイベント「チラミセnight」をきっかけに生まれた共創事業のストーリーをご紹介します。2015年5月のチラミセnightで出会ったコニカミノルタ社と学研グループのブックビヨンド社は、出会いから約1年後にハイブリット出版というサービスを開始しました。だれでも簡単に書籍出版と電子出版を体験できるこの共創事例を通して、新規事業を生み出すことの難しさや、新規事業を進めていくうえでの考え方などをご紹介します。

・藤塚洋介 コニカミノルタジャパン株式会社 情報機器ソリューション事業本部 アライアンス推進部プロジェクトマネージャー
・鈴木秀生 学研グループ 株式会社ブックビヨンド コンテンツプロデュース部マーケティングマネージャー
・広瀬眞之介 31VENTURESのコミュニティマネージャー兼、プライベート・コンサルタント。藤塚さん、鈴木さんが出会ったClipニホンバシのチラミセnightをコーディネート

異業種の2社を結びつけたチラミセnight

チラミセnightに参加されたきっかけを教えて下さい。

藤塚 会社の新規事業を中心にする部署に配属されたのをきっかけに、2015年4月から部署メンバー5名で契約してClipニホンバシ(現31VENTURESクラブ)の正式会員となりました。私が所属するコニカミノルタはコピーのメーカーですが、時代が変わるにつれて、ただモノを販売するのではなく、お客様の課題を見つけて、デジタルによるワークフロー変革を実現する、という方向に仕事の内容が変わりつつあります。そうした中で新規事業を開発する部署に異動になったのですが、コピー業界は長年にわたって同じビジネスモデルで続いてきたトラディショナルな業界ですので社内だけではなかなか新しい発想が生まれにくいのではと思い、チラミセnightに参加しました。刺激やヒントを得られるのではないかと思ったのです。

鈴木 私は、ここ十年ほど電子書籍市場開発など本に関わる新規事業を担当してきて、現在はデジタルライブラリー構築支援プラットフォーム事業を担当しています。昨年、Clipニホンバシを担当する三井不動産の方と外部の新規事業系のセミナーで一緒になった時に、「新規事業部は孤独だ」という話に思わず共感して、新規事業者たちが孤独にならずに活性化できるチラミセnightに誘っていただいたのがきっかけです。

チラミセnightではどういったことを話されたのですか。

鈴木 ブックビヨンドは「コンテンツの価値を最大化する」をミッションに2013年にスタートしたばかりの新会社です。昨年、地域の活性化ツールとしての電子出版プラットフォームを運営開始したので、チラミセnightではその事業内容と将来構想について話しました。(かんたんクラウドライブラリー WOOK(ウック): http://wook.jp/

藤塚 実は鈴木さんと同様に、地域に眠っているデジタルデータのアーカイブや、活用のビジネスアイデアを我々も持っていました。初めて参加したチラミセnightで自分達が考えていたアイデアに近い事を、すでに取り組んでいらっしゃる方が目の前でプレゼンをされていたので、当時一緒に参加していたメンバーと思わず顔を見合わせながら笑ってしまいました。一緒に何かできないかと思って、プレゼンが終わったあと早速挨拶しにいったんです。

異業種で繋がった方が、よりイノベーティブなものが生まれる

チラミセnightではパートナーが見つかると思っていましたか。

鈴木 どういった業種の方が集まっているのかがわからなかったので、最初からパートナーが見つかるとは思ってはいませんでした。ただ、普段我々がアライアンスを組まないような業界の人、ベンチャーの人が多いということは聞いていたので、チラミセnightでは意図しない出会いを求めていました。

広瀬 当時のチラミセnightは6社の登壇に加えて、20~30名の参加者だったので、企業数としては15社ほど様々な企業がいたのではないでしょうか。

鈴木 コンテンツ系のベンチャー企業と何か取り組みができるのかな、とは思っていたので、コニカミノルタさんからビジネスソリューションでお声がけをいただいたということは当初は意外でした。コニカミノルタさんはデジタルビジネスといえば近いですが、コンテンツビジネスの出版・電子出版から近いところにはいません。ただ、話を重ねるうちに相互の強みを理解することができ、何かできそうだという思いに変わっていきました。

異業種とのつながりはこれまでなかったのでしょうか?

鈴木 異業種の業界への働きかけはしていたつもりでした。ただ固定観念があるのか、新聞社・印刷会社・活字メディアなどどうしても近い業界になってしまう。普段取引のない業界となると、そもそも出会うきっかけが少ないです。 自分たちで網を投げようとすると、いつものやり方になってしまう。今回のチラミセnightに誘われたように誰かの投げた網にひっかかってみると意外な出会いが増えると実感しました。

広瀬 ある調査では、同じ業界の人より違う業界の人と新規事業を立ち上げたほうがよりイノベーティブなものが生まれる、というレポートがあります。異業種と組む分、それだけ失敗は多いですが、ブルーオーシャンのサービスや、より革新的な商品がでる可能性も高いようです。ですので、Clipニホンバシでは全く違う業界同士をつなぐことも意識してイベントを開催しています。

藤塚 コニカミノルタも、ソフトウエアやシステムインテグレーターなど、どちらかというと仕組みを構築する為の協業先が多いです。今回のブックビヨンド様のようにコンテンツ自体を取り扱っているアライアンス先は少なかったのです。

広瀬 協業によるブルーオーシャン型の新規事業が生まれるのは、A社とB社の既存事業でできる範囲(A)ではないと思っていて、A社とB社が既存事業を超えたところで生み出すブルーオーシャン型新規事業(B)が本来目指すべき形なのではないでしょうか。だからこそ異業種との出会いが重要で、Clipニホンバシでは、A社とB社が出会うことでしかできない新規事業を生み出すサポートをしています。

藤塚 今回のブックビヨンド様との協業はまさにそうです。2社でつながったら何かできるのではないかという話から始まって、まずは組めそうなところからはじまった。最初は既存事業外の新規事業の話を鈴木さんとよくしていました。ただ既存事業の範囲外になるので、なかなか進まなかったんです。そこで、まずは2社の既存事業を連携させて開発したのが、今回の「ハイブリット出版」サービスです。ブックビヨンドさんの持つ「デジタルブックライブラリー」とコニカミノルタグループの「kinko’s(キンコーズ)」をつなげた新サービスです。

鈴木 既存事業外となる事業アイデアでは、日本各地の素敵な夜景や観光地の美景をアーカイブしているようなコンテンツホルダーさんと連携して、コニカミノルタさんのプラネタリウムで日本中の美しい景色を誰でも投影できるような仕組みが作れないか、など話したりもしていました。

藤塚 そういうアイデアを話し始めると尽きないですね。ブックビヨンドさんのコンテンツは特に教育・料理やアイデアなど、魅力的なものが多いんです。今後は本という形こだわらない、アウトプットを我々ができたらいいなと思っています。3Dだったり、音だったり。こういった新しい可能性の話は延々と尽きません。

異業種との新規事業はしっかりと時間をかけて

新しい取り組みを社内への説明は大変でしたか

藤塚 今回の事業の社内説明はとても大変でした。特に、私のチームでは会社の変革につながる新規事業を立ち上げるというミッションがあったため、事業の将来性がしっかりしないまま安易にアライアンスを組むわけにはいきません。特に市場の規模感や将来性を会社は重視していたので、事業の可能性を鈴木さんとディスカッションしながら、社内説得用に具体的なプランへ落とし込むのに時間がかかりました。

鈴木 業種が違うので、ゴール設定のすり合わせが必要でしたが、全体として進めていくのが大変とは思いませんでした。同じ業種内のアライアンスは慣れもあって、たくさん立ち上がります。スピードは早いが、ルーティンになりがちです。異業種で、なおかつ会社規模が大きな企業とのほうが最初立ち上げに時間がかかり考えることも多い分、中長期的に育てていくことができると思っています。

広瀬 2社の共創事業の可能性が見えたとしても既存事業を越えたことをやろうとすると、とても時間がかかります。なので、まずはお互いにできるところからやろうという話になっていったのではないでしょうか。

鈴木 事業の可能性の話も大切ですが、社内も動かさないといけないので、将来の話ばかりはしていられません。社内を動かすためにはKPIに落とし込んだ具体的なスタートの話をして、ゴールを描いた将来的な事業に向けて中長期的なロードマップを引いてどう進めていくかが重要です。 また、私の場合は社内に説明するときは「新しい事業がやりたい」ではなく、課題を明示しました。その課題への解決策として事業説明した方がスムーズなので。

広瀬 新規事業をすすめる上で、時間をかけるということは大切ですね。既存事業と同じスピード感で新規事業ができると思っている人は多いですが、普段の新規事業立ち上げのスタンスのままで、異業種との新規事業を推し進めると、たぶんうまくいきません。Clipニホンバシをご利用いただいている方は、新規事業を立ち上げる時は時間がかかるといった考えを理解いただいていると思いますが、1年や数か月でイノベーション度の高い新規事業を生むのは困難です。

新規事業を生み出せる人材を育てることも大切

新規事業のゴールとは

藤塚 「ハイブリット出版」の契約数は増えていますね。

鈴木 これから様々な新サービスを追加して、より広い層へリーチしていきたいですね。今回のサービスは、当初話していた将来の事業をゴールだとすれば、まだまだスタート地点。これから、という感じです。 あと実は、このプロジェクトを通して、新規事業を生み出せる人材を増やすこともできるのではないかと期待もしています。新規事業は成功も失敗もあるが、こういった異業種とのコラボレーションで新規事業を立ち上げることができる人材が育つことも価値が高い気がしています。

広瀬 異業種と新規事業を立ち上げる人材を育てるのが大変ということでしょうか。

鈴木 大きな会社ほど大変だと思っています。組織が大きいと社内調整や社内営業時間を割かれがち。大きな縦割り組織の場合は、新しいプロジェクトを異業種の方との協業で立ち上げる道筋をある程度用意したほうがチャレンジしやすいのではないでしょうか。協調性が重要な会社組織の中で、自らリスクを取ってこれまでにない事業を立ち上げる人は少数派。みんながみんなセルフスターターなベンチャーマインドを持っているわけではないですから。事業開発部門やマーケティング部門など異業種のビジネスマンと出会う機会が多い部署以外の人でも新しいサービスを生めてしまうきっかけづくりの場になれば、より意義があるのではないかと思っています。

藤塚 お客様にサービスの良さをわかってもらうのと、社内にサービスを理解してもらうのはレイヤーが違いますね。我々も一つ二つでも成功して事例が残っていけば、新規事業を生み出せる人や、仕事を次のステージにつなげていく人増えるのではないかと考えています。

他社の事例を見て、自社の価値に気づく

Clipニホンバシのイベント・プログラムに参加する人たちの課題は

広瀬 もちろんベンチャーもいますが、大企業の新規事業に関わる方がClipニホンバシの利用者には半数ほどいます。新規事業担当者の方は、「新規事業をどうやったらいいのかわからない」「立ち上げたがうまくいかない」といった課題をもっている方は多いです。特に既存事業を越えた、ブルーオーシャンのビジネスを目指すというときに「何からすればいいのかわからない」という方が多くいます。

藤塚さんはClipニホンバシを1年近く利用されていて、ビジネスの見え方は変わりましたか

広瀬 藤塚さんはイベントにたくさん参加していただいていますよね!

藤塚 話を聞くだけではなくて、実際に使えるワークショップ形式のイベントが良いですよね。またイベントだけではなくて、普段のビジネスで困ったときや、より進めるときに31VENTURESのプライベートコンサルに相談しています。ビジネスにフィードバックしていることなどが積み重なって、ビジネスの落とし穴、失敗の法則がわかるようになってきました。最近は、チームメンバーからアイデアが出た段階で、どこが良くないのかがわかります。本当は良いポイントがわかればいいんですけど。ビジネスで欠けているところがわかるようになったのは、とても大切なことだと思っています。

鈴木さんはClipニホンバシにはどういった印象をもたれましたか

鈴木 チラミセNightに参加した時、情熱的な方が多かったので大変刺激を受けました。特にベンチャー企業の社長は場数も踏んでいるのでプレゼンが上手い。そういったプレゼンを見るとき、自社でやっていることが、その新しい企業がやったほうが早くできるんじゃないかと焦りました(笑)。改めて他社サービスとの差別化と自社が取り組む意義を再検討させられるよい機会になりましたね。

藤塚 それは僕も思います。最初にClipニホンバシに、「新規事業初心者」として参加したときは、ベンチャー企業のパワーに圧倒されました。ベンチャー企業の方は自分たちに足りないものをもっていて、彼らを見ていると「自分たちは新しいもの(事業)をやるよりは、既存事業の延長をやっていたほうがいいのでは」とも考えました。ただしそれは自分の会社をより深く知るきっかけになって、会社の歴史や研究事業、グローバル展開などを調べて、最終的には自分たちの強み・価値に気づくことに繋がりました。

広瀬 それは結局ユーザーがサービスを選ぶときも同じです。そういった視点に疑似的にでもさらされるというのは、その会社のビジネスを強くすることにつながると思っています。ベンチャーがすごいからベンチャーに転職します、ではなくて、ぜひ大手企業だからこそできることをやってほしいとは私も思っています。

鈴木 31VENTURESは今後どういった方向へ?

広瀬 会員同士の新規事業を立ち上げていくために日々体制を強化しています。チラミセnightを始めとした新規事業創出のイベントは複数開催しており、中には5ヵ月という期間で、ベンチャーと大手企業が組んで一緒に新規事業を生み出すプログラム(イントレnight)もあります。チームができるきっかけから、事業化まで全部サポートできるのが31VENTURESです。今後も日本を支える新たなビジネスを生み出したいと考えています。

鈴木 31VENTURESにはいろんな熱い想いがあるんですね。そういった想いを深く伝えるのは、やっぱり本がいいと思っています。いつか本を作りたい、想いを世界に届けたいと思ったときはぜひとも!

藤塚 まさかの営業ですか。(笑)

広瀬 ぜひご相談させてください!

取材日 2016年07月