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2015.02.01

「入居後の商談が今までと一変しました。お客様が『買うべき製品』だと認識して交渉の席についてくれるんです。」

「31 VENTURES」参加企業の熱いストーリーを紹介する「MEET THE 31 VENTURES」。

第1回は、株式会社クリューシステムズの代表取締役社長 平山勝彦氏と、三井不動産から出向し、現在、クリューシステムズで取締役副社長を務める石田隆泰氏にお話を伺います。
「映像に新しい価値を加える企業」という理念を掲げ、監視カメラとそのクラウド型管理運営ソリューションを提供するクリューシステムズ。
そのストーリーに秘められたベンチャーへの想いとは?

  • 平山 勝彦株式会社クリューシステムズ 代表取締役社長。1957年生まれ。岩手県出身。岩手大学工学部卒業。アルプス電気勤務を経て独立。岩手県発のベンチャーとしてネットワークのチップを開発する会社として岩手県で企業、3年後シリコンバレーにも進出。2008年にクリューシステムズを設立、2013年「LIAISON-STAGE霞が関」に入居。
  • 石田 隆泰三井不動産株式会社 ビルディング本部で「LIAISON-STAGE霞が関」の立ち上げを担当。2014年12月より株式会社クリューシステムズに出向、取締役副社長に就任。2013年2月から「LIAISON-STAGE霞が関」に入居のクリューシステムズの担当となり、平山氏と共に営業先を開拓。新規事業を立ち上げる。

「3年働いたら独立したい」と熱弁した就活面接

まず、平山さんご自身の足跡についてお聞かせください。ベンチャーの道を選んだきっかけはありますか?

平山 「ベンチャーカンパニーを作りたい」と思い立ったのは、今から27年ほど前、私が大学生の頃でした。

大学では何を専攻されていたのでしょうか?

平山 岩手大学工学部の電子科で研究をしていました。もうずいぶん昔の話になりますが、コンピュータについて専門書で学んでいると、あらゆる企業がシリコンバレーで生まれたと書かれていました。それも、2人とか3人で始めた企業がコンピュータに関連する様々なものを創りだすようになっている。それで、自分でもやってみたいと思ったのです。

そのまま起業の道を?

平山 いえ。卒業後はアルプス電気に入社しました。しかし、ベンチャーへの思いが消えたわけではありません。就活時の面接では、アルプス電気の役員が並んでいる前で、「3年ぐらい働いて独立したい」って、真剣に言ったんです(笑)。

本当に3年で独立されたのですか?

平山 入社後は世界初のカーナビ開発に携わりまして、実際に独立したのは入社から6年程経った、私が30歳の時でした。 本社を岩手に置きましたが、シリコンバレーにも現地法人を設立し、住まいもアメリカに移しました。その会社は最終的には、2001年M&Aされました。帰国後はコンサル活動などをしておりまして、エムログという会社の立ち上げにも参画しています。

30歳で独立されてずっとベンチャーを経営されているのですね。現在、代表取締役を務めていらっしゃる株式会社クリューシステムズはどのように生まれたのでしょうか?

平山 クリューシステムズを法人として登記したのは2008年の2月です。当時私がいたエムログとオウケイウェイヴが共同でデータセンターを運営する法人として設立したのがクリューシステムズです。私が社長に就任して、会社として本格的に運用を始めたのは2009年9月のことです。

ストックオプションも出資も不要?

石田さんは現在クリューシステムズで副社長を務めていらっしゃいますが、合流したのはそのタイミングですか?

石田 私がクリューシステムズと関わるようになったのはもっと最近です。初めて接触したのは2012年でしたね。当時、私はここ、つまり、三井不動産が運営する「LIAISON-STAGE 霞が関」の担当をしていました。

「三井不動産の社員」として「LIAISON-STAGE 霞が関」の担当をされていたということでしょうか?

石田 そうです、施設の立ち上げの担当をしておりました。そういったときにあるベンチャーキャピタルからクリューシステムズをご紹介いただいたのがきっかけです。

紹介があったのはクリューシステムズだけですか?

石田 いえ、多くのベンチャー企業をご紹介いただいた中の一社でした。プレゼンの内容や、平山の人柄が非常に魅力的で一緒に事業をやりたいと思うようになったんです。このような経緯がありまして、第一号の入居者として、「LIAISON-STAGE 霞が関」に入っていただきました。

石田さんは入居後のクリューシステムズとどのように関わったのでしょうか?

石田 平山と一緒にあちこちに営業して回りました。ただそれはクリューシステムズの人間としてではなく、あくまで「LIAISON-STAGE 霞が関」の担当者としての立場です。

三井不動産サイドとしてということですよね?

石田 そうです、三井不動産として純粋にクリューシステムズを支援していました。

そこまでのことをやってくれるのですね。

石田 「LIAISON-STAGE 霞が関」の精神は、入居者からの賃料で儲けようというものではありません。入居された企業が大きく育って、三井不動産のファンになってくれて、将来大きなテナントに帰ってきてもらえればいいな、と思っています。

それは何か契約を結ぶのですか?

石田 単純にいい人間関係が構築できて、また入居してもらえたらというだけのもの、契約を結ぶわけではありません。三井不動産が運営する「LIAISON-STAGE 霞が関」は、通常の施設と比べるとその辺りに特徴があります。

具体的に教えていただけますか?

石田 ほとんどのインキュベーション施設は、ストックオプションを取ったりします。「賃料を安くする代わりに、将来その会社が成長したら株式で回収してやろう」ということですよね。でも、三井不動産の「LIAISON-STAGE 霞が関」では、そういった一律の決まりはありません。出資を受けなければいけないといったこともないのです。ベンチャー企業の育成や、雇用機会の創出といったサポートをすることが、社会貢献だと経営陣も考えているのです。

スタンスが全く異なるのですね。

石田 だから、将来的に別の不動産業者が運営するビルに入居することもありうるのです。鮭みたいに「元の川」に戻らなくて「別の川」に帰ってもいい(笑)。でも、それは強い人間関係を作ればきっと戻ってきてもらえると信じているということなんです。

「商談」と「顧客の質」が大きく変わる

応募された立場の平山さんに伺います。「LIAISON-STAGE 霞が関」に入居しようと思ったきっかけを教えてください。

平山 ここに入居する前は、比較的小さな神田のビルに入っていました。当社に出資頂いているSMBCベンチャーキャピタルの勝川社長から「クリューシステムズは大手優良顧客ばかりなので、もっといいところに引っ越したほうがいいんじゃないか?」とアドバイスをもらい、三井不動産がインキュベーション施設をやっているからと紹介してもらって、応募してみました。

家賃などの条件は?

平山 神田のビルより広いスペースで、そこよりも安い家賃でした。しかもすばらしい立地で、会議室などの設備もとても整っています。

どのようなところに惹かれたのでしょうか?

平山 「何ら付帯条件がなく、純粋に事業支援頂ける」というところです。先ほど石田さん言われてとおり、ストックオプションも不要ですし、担保もいらない。さらに「製品を売ってあげます」というから「そんな夢のような」とおどろきました。

実際に入居されていかがですか?

平山 お客様が確実に変わりましたね。ベンチャーが苦労するのは、なんといっても実績です。弊社はクラウド型監視カメラを扱っていますが、実績がないと商品はまず売れません。よっぽど惚れ込んでくれた方がサンプルで買ってくれるくらいですね。しかし、入居後の商談は一変しました。お客様が「これは買うべき製品である」と認識した状態で席についてくれるのです。逆に、冷やかしの半分のような変な問合せもなくなりました。

石田さんを始めとした三井不動産の方からお客様の紹介があったのですか?

平山 紹介もそうなのですが、まず三井不動産が「お客様」になってくれました。「自分が買います」と、この「霞が関ビルディング」にも私どもの監視カメラを導入していただきました。ここに入ると社員も含めて気持ちも変わりますね。プライドができてきたのだと思います。

シナジー効果で「レッドオーシャン」への参入を決意する!

ここで御社の事業についてお伺いします。今お話にも出ましたが、大規模施設向けの監視カメラをメインに営業されていたのですか?

平山 アルプス電気時代にカーナビの開発をした経験から、車に関する知識はありましたので、当初は車載のドライブレコーダーに取り組んでいました。実際、「LIAISON-STAGE 霞が関」へのプレゼン内容もドライブレコーダーの事業でした。でも「僕らは車は扱いません」と言われてガクっときたのを覚えています(笑)。石田三井不動産にとって、ドライブレコーダーはあまり関係がありませんでしたが、それでも自分がお手伝いをする絵が描けたのがきっかけでした。というのも、大規模施設に設置されている監視カメラの多くは「付いてさえいればよい」というような質の低いものが多かったんですね。

カメラの「質」?

石田 画質ですね、解像度が低いんです。当時は三井不動産の担当でしたらから「平山さん」と言いますが、「平山さんの技術があれば、大規模施設の監視カメラのグレードを格段に上げ、コストを下げられるんじゃないか」とその時に思ったのです。

平山さんはなぜ監視カメラには参入しようとしていなかったのですか?

平山 監視カメラの市場は「レッドオーシャン」だと思っていたからです。

レッドオーシャン?

平山 「血の海」、つまり強豪がひしめき合っている市場を指す言葉です。誰でも知っているような大手のメーカーが参入して競合しています。500億円以上の市場規模があることは知っていましたが、ベンチャーはそんなところに参入してはいけない。そういう市場は大手企業がきっちり抑えているからです。だからベンチャーは「ブルーオーシャン」、つまり敵がいないニッチな市場を攻めるべきだと考えています。

正反対の戦略ですね。

石田 私は私で「ビルの監視カメラに関係しそうな案件、たくさん持ってますから」なんてお話しして。

平山 お互いにシナジー効果が生まれるのが理想的ですから、結局「とりあえず回ってみましょう」となったんです。どのくらいでしたっけ?

石田 半年くらいですね。

平山 そして、実際に石田と回ってみたら「こんなにもニーズが隠れているか」とわかりまして。そこで本腰を入れてスタートしたのが、現在「SeeIT」という名前で展開している監視カメラ事業です。

石田 三井不動産も、その時に会社として注力する価値のある事業だと気がつきまして、2014年の7月に経営会議で承認されクリューシステムズへの出資が決まりました。背景のストーリーとして、普段からオフィス事業を通して顧客の幅広いニーズに接しているので、自然と企業が何を求めているのかマーケティングできていたのが大きいですね。

どのくらい出資されているのですか?

石田 こういったベンチャーへの出資でよくある5〜10%の「お付き合い出資」ではなくて、ある程度の株式を持っています。さらに私ともう1名が、三井不動産に籍を置いたまま出向という形で、経営や営業に携わっています。それが2014年の11月のことです。

そのタイミングで現在の取締役副社長に就任されたのですね。

石田 そうです。ただ、三井不動産として「資金を出すから人を入れさせろ」というような話ではありません。

平山 出向に関しては、なにせベンチャーで人が足りませんから、こちらからお願いして、お互いに納得して実現した形ですね。

映像プラットフォームを目指す

最後に、この事業についてもう少し詳しくお聞きします。御社の製品「SeeIT」の特徴、ストロングポイントを教えてください。

平山 画像分析です。ビルは屋内ですから、埃や水、温度など耐環境性は売りになりません。石田が画質の話をしましたが、単に高画質の画像を録画するだけならば、今はどんなカメラでも安く行えます。私たちだけが優れているわけではありません。私たちの特徴は「高画質で撮った映像を安価に分析できる」というところなんです。

分析というのは顔認識やナンバープレート認識のようなイメージでしょうか?

石田 そうですね。でも、これらの映像分析ソフトって通常は物凄く高いんです。それはなぜかと言えば、ひとつのクライアントのためだけに作るから。カメラとハードディスクと分析ソフト一式で3000万円、というような世界です。でも「SeeIT」は月額1000円くらいの価格帯から提供できるんです。桁がひとつではなく、いくつも違います。

どうしてそのようなことが可能なのでしょうか?

石田 「SeeIT」はクラウドでデータを扱うからです。

平山 アメリカ時代に、インターネットでビデオを流すということに集中して取り組んでいた経験がありまして、要は大容量の動画データ通信に関する知識があったんですね。

石田 「高画質のままクラウドで扱える」というのは、平山の技術があるからこそ実現できることです。これは共同特許の形で申請中です。

事業の今後の展望を教えてください。

石田 今は、監視カメラそのものと、そのカメラの映像を管理するクラウド型ソリューションが商品となっています。しかし、いずれはこれを共通プラットフォームとして展開したいと考えています。

プラットフォームとはどういう意味でしょうか?

平山 弊社のカメラを普及させることで「高画質の監視映像をいつでもクラウド上で扱えるプラットフォーム」を作りたい。映像のプラットフォームを提供して、外部の人や会社でも独自に分析ソフトを開発してもらえるような環境にしたいですね。私たちのカメラからクラウド上に集まった高画質の映像を、どのように使うか、どう使いたいかは、業種によって異なり、多様なニーズがあると思うんです。「こうやって使いたい」と思った企業や人が、分析ソフトを独自に開発できるように、プラットフォームとして提供していきたいですね。

ビジネスモデルはどのようにお考えですか?

平山 スマートフォンのアプリのような使いかたです。私たちは映像プラットフォームを提供する。様々なサードパーティーが分析ソフトを開発する。私たちはその分析ソフトが使われる度に、プラットフォームの利用料をもらえる。そんなビジネスにしていきたいと考えています。