STORY 2015.08.25 UPDATE

会員の共創による街づくり「柏の葉図書館プロジェクト」

このたび、柏の葉の駅前に新しい「図書館」がオープンします。といっても、大きな建物が建つのではなく、住民のみなさんが持ち寄る本を中心に子どもたちとその親が交流できる場所を、小さなユニットで創っていくというプロジェクトです。『柏の葉 本のたからばこ~Family library~』。街のみなさんと一緒にこのプロジェクトを創り上げたのが、KOIL会員の水上哲也建築設計事務所の水上哲也さん、ままてぃの篠原晋寧さん、そして前回このコラムでご紹介したシーズ・クリエイトの角田優剛さんです。水上さんと篠原さんに、実現までのストーリーと、このプロジェクトにかける想いについて伺いました。

『行政に頼るんじゃなくて、自分たちで創る。KOILでその仲間が自然に集まりました』

ーこのプロジェクトの発起人でプロデューサー的役割を担ったのが、篠原さんということですよね。

篠原そうですね。この街は『柏の葉スマートシティ』として最先端の街づくりが行われています。それは私も誇りに思っていますが、実際に暮らしているといくつか欲しい施設や機能があることも確かです。以前、私が主宰する『ままてぃ』という地域のママさん支援組織で柏の葉のガイドブックを創ったのですが、その際にママさんたちとの会話で「子どものための図書館、本を核にして親子が集まれるような場所が駅前にあるといいね」という話が出まして。それは常々私自身思っていたことだったんです。今年の2月くらいですね。それで、ならば自分で創ればいいじゃん!と思ったんです
篠原それで、柏市とか三井不動産とかにご提案してみると、ちょうど三井不動産レジデンシャルが新しいマンションのモデルルームを企画しているときでした。単純な住宅の販売ではなく街の価値を上げていくことで住民を増やしていく、というお考えがちょうど私の企画とマッチしたので、一度提案してみて、と言っていただけました。ただ、具体的な提案、となると私は図面も書けないし、専門的なことは自分では何もできないんです。それで、KOILで知り合った建築家の水上さんに声をおかけしました。水上さんはパパさんでもあるので、きっと理解していただけるのではないかなと。それから、WEBとかシステムも必要だなと思ったので、角田さんに声をおかけしたら、すぐに乗ってきてくださいました。それであっという間に3人のチームが出来たというわけです

『みんなが参加して、育っていく図書館。本箱というユニットが、施設ではなくアクティビティとしての図書館を実現します。』

ー今回の「図書館」は、小さな本箱の集まりで、それは今後街じゅうに点在したり、移転したりしていける、というのが大きなコンセプトですよね。これはどこから発想されたんですか?

水上このお話をいただいた時点で、すでに空間の設計は終わっていてすでに施工が始まっていました。私にできるのは、家具のデザインだったんですね。今回はモデルルーム内ということで建物は仮設です。いつかは無くなる。将来移動できるようなカタチはなんだろう、と考えて、小さな本箱というモジュールの集合体、というアイデアが生まれました。そうすると、本箱は小さなスペースにも置けるし、移動性、拡張性があります。同じものが椅子にも机にもなる。街じゅうに広がる図書館、みんなが参加して育っていく図書館。そういう提案をさせていただきました。
篠原建築家って、こういうことをしてくれるんだ!と、すごく驚きました。コンセプトとか、価値を創造してくれるんだ、と。しかもあっという間に設計図や模型まで創ってくださって、目を丸くするばかりでしたよ。
水上本箱の材質は、どこでも手に入る普通の合板です。汚れも傷も付く。でもそれが風合いや記憶になっていくと考えています。そして本箱だけでできた均質な空間なので、色を塗らずに材の色ムラをそのまま出しました。色ムラは個性とも考えることができます。子どもたちの個性。それと、この街に『ムラ』を創りたいと考えていました。キーワードは、『時間』。長い時間に耐えられること。この街に根付くこと。今の子どもたちの、その子どもたちの時代まで続くようなプロジェクトになってもらいたいと思っています。
水上そして、それをどこで創るか。釘などを使わず組むこと、そして街のみんなが製造過程を共有できる近場で製作いただけるところが良いと思っていたのですが、なかなか無くて。WEBや電話でいろいろと探して、ついに流山市のマツダ工業さんに引き受けていただけることになりました。マツダ工業さんは、私たちの想いや狙いを理解してくださって、無理も聞いていただき、本当に丁寧な仕事をして下さいました。

人と共創するということの豊かさを、あらためて感じました

ーそんな中、柏の葉で開催された国際ビジネスコンテスト「AEA(アジア・アントレプレナーシップ・アワード)」の参加者と、偶然の出会いからコラボレーションすることになったんですよね。

篠原そうなんです。WEBでの子ども服リサイクルを手掛けているキャリーオンの長森さんが、コンテストの合間にKOILパークにいらっしゃいました。紹介されてお会いして、実はこんなことをしています、とお話ししたら、すごく興味をもってくださって。『じゃあ近いうち情報交換しましょう』と言ったら『いや、今しましょう』と(笑)。そして、その日のうちにコラボが決まり、3日後にはHPが出来ていました。このプロジェクトは、各家庭で読まなくなった本のリサイクルを中心にしているのですが、その際に着なくなった子ども服も集める。それをキャリーオンさんが販売して図書館プロジェクトの資金にするというスキームです。このスピード感!最高ですよね。
篠原このプロジェクトは、ほかにも多くの人との共創で成りたっています。ままてぃのスタッフや街のみなさんはもちろん、多くのKOIL会員さんもボランティアで手伝ってくれています。カメラマンの久保真二さんは 記録写真だけではなく、あらゆることを手伝ってくれています。試作品のニス塗りはKOILディレクターの大須賀さんにも手伝ってもらいましたし、壁塗りは、Fullerの藤原さん、櫻井さんが当日いきなり手伝いに来てくれました!本と服の集荷場所には、KOILにあるカフェAGORAさんが一肌脱いでくれました。それから、すごく自由にやらせて下さっている三井不動産レジデンシャルの皆さまにも感謝です。
そして、水上さんとの共創は最高ですね。私とは全く違う視点でとことんこだわってくれる。私が水上さんのアイデアに異論を唱えると『今のは正直傷つきました』とか言いながら、妥協しないで戦ってくれるんです。
水上優れたコンセプトでもそれだけでは実現する価値はなく、ユーザーの共感がなければ、価値は生まれないですね。コンセプトだけがふわふわと宙に浮いているようなものは創りたくないと思っています。公的なプロジェクトはユーザーの顔が見えにくいことがありますが、篠原さんは『ユーザー代表』だと思います。自分の考えをしっかり伝え、責任感と行動力が伴った人。篠原さんと仕事をして、あらためて人と共創するということの豊かさを実感させていただきました。お互いに無いものを補完しあえる関係性を築けたように思っています。その出会いの場としてのこの街、そしてKOILの可能性を感じることができたプロジェクトでした。

ー住民参加による街づくり、それにスモール・ビジネスとしてプロが参加していく。1つの理想形を見る想いです。プロジェクトはまだスタートしたばかり。これからのみなさんの活躍に期待するとともに、出来る限りのお手伝いをしていきたいと思います。ありがとうございました!

取材日 2015年08月