STORY 2018.08.01 UPDATE

「一緒に考えて、一緒に創る」スマホアプリ分析・共創支援のフラーが実行するKOILでのまちづくり

2014年4月にオープンした「31VENTURES KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)」(以下、KOIL)には、イノベーションを担う数々の企業が入居しています。
アプリ分析支援事業とスマホビジネス共創事業を事業とするフラー株式会社もそのひとつ。2014年10月からKOILに入居し、企業の成長に合わせてフロアを広げてきました。
今回は代表取締役COO兼CCOの櫻井裕基さんに、入居された経緯と「柏の葉」の街との関わりについて、KOILの運営を担当する三井不動産の西林加織とともに話を伺いました。
  • 櫻井裕基

    フラー株式会社 代表取締役COO兼CCO
    https://fuller-inc.com/

  • 西林加織

    三井不動産株式会社 柏の葉街づくり推進部 事業グループ 主事

会社の成長に合わせてオフィスもステップアップ

フラー株式会社がKOILを拠点にしたきっかけは?

櫻井ここに来る前は守谷のオフィスでした。人数が増えてきたので、同じ守谷で物件を探していたんですけど、目星をつけてたところが埋まってしまって。そうしたら、「アジア・アントレプレナーシップ・アワード(AEA)」(※三井不動産が共催するビジネスコンテスト)に参加したとき、KOILを教えてもらったんです。それで、さっそく代表の渋谷(修太 代表取締役CEO)と一緒に内見をしました。「ちょっとオシャレすぎて、みんなにはキツいかな」と思ったんですけど、ほぼ即決で。
右:三井不動産株式会社 柏の葉街づくり推進部 事業グループ 主事 西林加織
左:フラー株式会社 代表取締役COO兼CCO 櫻井裕基氏
西林守谷の前は一軒家のオフィスだったんですよね?
櫻井そうなんです。つくば市内の一軒家借りて、みんなで一緒に住んで、ムクっと起きたら仕事、みたいな。だから、「家感」みたいなものがあったほうがいいかなと思ってたんですけど、だんだん馴染んでくるというか、住めば都でしたね。KOILって、会社の成長に合わせてしっかり箱を用意してくれるというか、KOILの中でステップがあるのは素晴らしいな、と感じていました。シリコンバレーや上海もそうなんですけど、その場所の中でしっかりと根を下ろして、成長していけるのがいいですよね。

KOILの中では、これまでに2回フロアを移動されて、まさに成長に合わせてこられたわけですが、現在のオフィスのコンセプトは?

櫻井やっぱり、もともと一軒家からはじまっているので、あまりオフィスっぽくしたくないな、というのはあって。こういう畳の場所で靴を脱いだり、横になったりするのって、案外大事なんですよ。執務スペースにもパーテーションとか壁を置かずに、みんなの顔が見られるようにしていて。
1フロアに執務スペースとミーティングスペースを集約。壁を置かずにオープンな空間となっている。
畳のスペースにはマンガや雑誌なども置かれ、くつろげるようになっている。
西林それと、ちょうど私が担当になったばかりのころだったと思うんですけど、「お弁当問題」がありましたよね。
櫻井そうそう。近くのお弁当屋さんがどうも口に合わなくて、みんなバラバラに食べるようになっちゃったんです。でも、昔は朝起きたらみんなで朝ごはんを食べてたんですよ。その中で話し合うことが意外とビジネスにも役立つことがあって。「同じ釜の飯を食う」って言いますけど、それが本当に大事なんです。だから、どこかにお願いできないかな、と西林さんに相談したんです。
西林 なるほど「同じ釜の飯」。ベンチャー企業にとってはそういった要素も大事なんだと気付かされました。近隣のお弁当デリバリーは「50食以上の注文がないと難しい」とのことだったのでKOIL内でカフェ・レストランをやってもらっているAGORAさんに相談してみました。やはり代表は理解のある方で、KOIL内の交流のためにとなんとか作っていただけるようになりました。
西林そこで、価格帯やバリエーションなど、フラーさんとのやりとりで決めていったんですけど、意外と他のテナント様も「お弁当を注文したい」というお声をいただいて。
櫻井もうすぐ2年くらいですかね。昨日もちょうどみんなで中華を頼んでランチしたところだったんです。お弁当を注文しはじめたころはまだ2、30名くらいだったと思うんですけど、もううちだけで50名くらいになったので、大所帯になりましたね。このフロアに移ってきたときは広すぎて、だいぶ余裕がありましたけど、ちょうど良くなってきましたよね。
西林毎月のようにICカードの申請をいただくので、「あ、また新しく社員さんが入ったんだ」って、徐々に成長されている様子を間近に感じています。

ビジネス共創で生まれたロードマップガイド

KOILの特色はどんなところにあると思いますか?

櫻井KOIL内の交流が活発なんですよね。みんな距離感が近いというか。
西林私たちも6階にいるので、廊下ですれ違ったり、エレベーターで一緒になったりしたとき、なにげなく話す言葉が大きな気づきになるんです。「こんなふうになったらいいのに」というご要望の声がリアルタイムでわかるので、本当にありがたいですね。
櫻井西林さんもこの近くに住んでますもんね。僕らも社員の8割くらいはこの辺りに住んでいるので、普段から話しかけやすいんですよ。「こんなことできませんか?」と聞くと、すぐに「検討してみますね」とレスポンスをくれて、実現に向けて動いてくれているのが手に取ってわかる。普通、これだけの大企業で、いろんな人が関わってる中で、仕組みを変えるのって大変じゃないですか。でもそこを柔軟に対応してくれて、KOILとしてもコミュニティとしても成長している。僕らが入ったときよりも格段に活気が出てきましたよね。
西林オープンから4年経って、KOILの認知度も上がってきました。私どもからすると、フラーさんが積極的にKOILはもちろん、「柏の葉」という街をアピールしてくださっているのが、本当にありがたいんです。
櫻井僕ら自身、「柏の葉」という街をすごく大切にしているんですよね。そもそも、つくばで創業したのも、Facebookが創業当初、みんなで一軒家を借りてスタートしたみたいに、わざわざ都心に行かなくてもビジネスはできる、っていうことを証明したかったからなんです。


柏の葉ロードマップガイド 」を制作されたきっかけは?

西林2年前にちょうど柏市長を交えて会合の場を設けたんですけど、そこで話が盛り上がったんですよね。
「 柏の葉ロードマップガイド」WEBサイト
櫻井ちょうど僕らもアプリ分析支援とスマホビジネス共創を事業の二本柱にしていこうというところで、「アプリといえばフラーだよね」という世界を作ろうとしている。柏の葉も2030年にスマートシティを目指す中で、ICTの力は欠かせない。そのふたつの接点をいろいろと話し合ったんです。
西林柏の葉スマートシティでは「環境共生」「新産業創造」「健康長寿」の3つをコンセプトに街づくりをおこなっていますが、フラーさんをはじめ、KOILはまさに新産業創造の核となる拠点です。そして、健康長寿の取り組みとしては、ランニングコースを作っていたんですよね。ただ、正直なところ、認知度としてはまだまだ、という課題がありました。
櫻井認知されていないというか、情報とリンクされていない、ということですね。ハードとソフトをつなげて、はじめてそれが活用されるようになります。
西林この敷地内にある三井ガーデンホテルからも、「外国のお客様からランニングコースについてよく聞かれるけど、ご案内できるツールがない」という意見をもらっていたので、なんとかしなくては、と考えていました。ですから、フラーさんには最初、アプリ制作を依頼したんです。
櫻井でも、どんな形態が最善なのかを考えると、アプリがいいとは限らない。たとえばよく、ロードマップを見開きに印刷したガイドブックみたいなものがあるけど、走りながらいちいち地図って開かないじゃないですか。やっぱりスマホを取り出して検索するのが自然。そうすると、ストアからダウンロードが必要なアプリではなく、WEBサイトとして制作するのが最適だと考えたんです。
西林でも……かなり「無茶振り」じゃなかったですか?
櫻井あはは(笑)。まぁ、確かにかなり急いで作りましたね。三井不動産の担当の方と一緒にコースを見て回って、撮影したんですよ。デザインも僕が担当して。
ロードマップガイドの制作風景
櫻井よくあるじゃないですか。発注者から「こんなのを作りたい」と言われて、受注者が「はい、わかりました」とその通りに作る、みたいな。でも、僕らは最初から「そもそも、それって本当に作りたいモノですか?」と問いかけるところからはじまって、発注者と一緒に考えて、手を動かしながら、楽しく制作をする。そのほうが、絶対にみんなにとって良いモノになるんですよ。「アプリを制作する」ことが目的なのではなくて、その先の「どんな世界を実現したいのか」ということが大事なはず。そして、もしそれがスマホによって実現することなら、僕らが自信を持って協力できることだと考えています。

新しいモノを生み出せる環境がここにある

これからKOILとどう関わっていきたいですか。

櫻井そうですね、企業ってそんな頻繁に移転を繰り返すものでもありませんから、なんらかのご縁があって、その場所にいる。場所ってやっぱり少なからず影響があって、「ここでしかできないこと」ってあると思うんです。このKOILで、たまたま三井不動産さんと関わって、他のテナントさん、街に住む人……それぞれとフラットにつながっていくことで、これまでにないことが生み出せるかもしれない。それが、モノなのか、街なのか、システムなのかはわからないけど、少なくとも新しいものが生み出せる環境がここにあると思うんです。
西林世界のモデルとなるようなスマートシティを目指すには、私たちだけではできないことがたくさんあります。そういった意味ではフラーさん自身の「色」もどんどんつけていただきたいと思ってます。フラーさんをはじめKOILに入居するみなさん本当に「自分たちがまちづくりのプレイヤー」という意識を持って、同じビジョンを共有しているんですよね。本当にありがたいです。
櫻井みんな、この街のことが好きなんですよね。街をよくすることが、結果的に自分たちのためにもなる。僕らは会社を経営している以上、社員には幸せでいて欲しいと思いますし、毎日の6、7割を割いていてくれている勤務時間を楽しんでいてほしい。それに加えて、帰った後も幸せなら、このうえないじゃないですか。僕らは「世界一、人を惹きつける会社になりたい」というビジョンがあって、「データによって人々の幸せを作っていきたい」というミッションがある。その延長線上に、いま、この場所にいることもつながってるんだと思います。

ありがとうございました!

(編集:大矢幸世 写真:安井信介)
取材日 2018年07月